
過食症になった娘(紗月さん)とお母さんが二人三脚(カウンセラー含め三人四脚!?)で乗り越えたカウンセリング治療体験手記 第4章。
「今太ったって言うたなあ!」
「おかん、陽介(次男)に言うたやろ!」
「全部私が悪いんか!?もう信じられへん!」
トラブル続きの日々で、我慢の限界にきてしまったお母さんでしたが、ふと脳裏をよぎった閃きにより、ピンチは過食症完治へのチャンスとなっていきます。
【登場人物】

紗月さん
過食症に悩む20代の女性
会社員をしながら小説を書いている

お母さん
紗月さんの母親
紗月さんの過食症をなんとか治したくて、
淀屋橋心理療法センターへ相談する

俊介先生
淀屋橋心理療法センターのカウンセラー(臨床心理士)

紗月の祖母
タエさん
Vol.3「大荒れ、嵐の始まりと収束は、以下からお読みください。
紗月が語ってくれた思い

私:小説書き!小説!
あんたにはあんたにしかできんことがある!
私はずっとずっとあんたを応援してる!
紗月:うん。小説書く‼︎
そう言って紗月が書き終えた小説を二人で一緒に読み、紗月が今まで話せなかった本音を語ってくれたあの夜以降、家族にとって良いことが本当にたくさん起こりました。
紗月の大好きなRADWIMPS(ラッドウィンプス)のコンサートチケットが当たって行けることになったり、RADWIMPSのコンサートがきっかけで、紗月に新しい友達ができたり。
紗月と母、二人でよくウォーキングにも行きました。

ウォーキングをしていると、紗月は新しい小説の構想を色々話してくれます。
1時間くらいずーっと話してくれることもありました。
実は、紗月の書く小説はマイノリティの人々に関するものです。
どうして マイノリティの人々にスポットを当てているのかも、紗月は話してくれました。
「マイノリティの人達は人と違う生活、人と違う生き方をしてる。
そんな中で偏見があったり、差別があったり、
生きていく上での様々な障害を抱えながら毎日を送ってる。
そういう人たちは、どんな風に支えてもらったら
障害を乗り越えていくことができるんだろう。
そんなことを考えながら私は小説を書いてる。
私、ひねくれてるやん?
でも、いつも誰かに支えてもらいたいって思ってる。
だから、ひねくれてる人がそのままの自分を受け止めてくれる人に出会ったら、
どんな反応するんやろう?って考えながら、小説を書いてる。
でも出版社は、私が本当に書きたいものをなかなか書かせてくれないけどね」

小説の登場人物の設定を、世相や背景、生活環境、何歳でどんな学校に行き、その環境は・・・などと、細かく細かく設定することで、リアルな人物像が出せるということについても紗月は語ってくれました。
私が「うんうん」とうなずくだけで、紗月の口からは思いが詰まった言葉たちが溢れ出し、いろいろなことをたくさん話してくれました。
話しの内容も濃く、聞いていてどんどん引き込まれる魅力的な話し方になっていました。
そして、どちらかと言うと嫌っていたおばあちゃんに対しても、紗月は少しずつ気遣いの気持ちを表すようになり、「紗月ちゃん、最近優しいなったなぁ」とおばあちゃんが嬉しそうに話してくれることも増えました。

「職場の上司に仕事を覚えるのが早いと褒められた」と紗月が嬉しそうに話してくれたり、良いことがたくさん起こってきました。
それでも時々起こる過食

けれどもやっぱり、時々隠れて過食しては
「こんなとこにパン置いとくな!」と、人のせいにして怒ることはありました。
職場の悩みも色々抱えているようですが、
それを誰かに打ち明けることはできず、
同僚へ相談することも、自分からはまだ難しいようでした。
カウンセリングの時に、俊介先生に相談をすると、
「職場では、上司に何か意見を言ったり、
こうして欲しいと言ったりするのは、紗月さんにとってはまだ難しいようですね。
今後、身近な人や上司、小説の編集さんなどへの”交渉する力”が
どのように紗月さんに芽生えてくるかを見ていきましょう」

そうアドバイスをしてくれました。
もう少しだけ、紗月の成長を応援しながら待ってみよう。
そう思いました。
念願が叶った!家族みんなで鍋を囲む

10月に入ると、紗月は出版の打ち合わせが色々と忙しくなっていきました。
11月には、私の念願だった鍋を家族みんなで食べられるようになりました。
鍋なんて3年ぶり?4年ぶり?
夢がひとつ叶いました。よかった。
紗月は、今までは避けるようにしていたお父さんに対しても、携帯の使い方を説明したり、自分の意見を言ったりできるようになりました。
食事をして「美味しい」と言ってくれることが増えてきました。
家族で一緒に食事をしたり、時々料理を手伝ってくれたり、
食卓の雰囲気も『モノトーン』から『彩り』に変わりました。
食べることを怖がっていた紗月の気持ちが、すーっと薄らいでいくように思えました。
「私、過食症治ったんちゃうかな?」

我が家に少しずつ彩りが増えてきたある日、
「私、過食症治ったんちゃうかな?」と紗月が言いました。
紗月:もう体型のことなんか気にならへん。
人生において痩せることの重要度は何番目か?と聞かれたら、
ずっとずっと下の方や。5番6番ちゃうか。
おかんおかん、もうカウンセリング行かんでええで。私、治ってるから。
(私も本当に治ってきてると思いました。
けれども俊介先生からは「治りましたよ」とも「終了近いです」とも言われていません。
今まで「治った」と自己判断をして、気を抜いて、散々えらい目に会ってきた私です。
先生が「カウンセリング卒業」と言わないのには、それなりの理由があるはずだと思いました。)
私:うん、私もそう思うんやけどな。
そうやけど、先生からはまだ「治った」とも「カウンセリング卒業」とも言われてない。
それには何か理由があると思うねん。
紗月:そんなん言わへんわ。商売やもん。
私: いや、せやけどな、淀屋橋心理療法センターに行って先生のアドバイス聞くと、人の見方が変わる。こんな風に考えたら良かったんかって色々勉強になる。
せやから私は、自分の勉強だと思って、先生が「カウンセリング卒業」って言ってくれるまでやってみたいんや。
紗月:あ、そう。宗教にハマる人って、みんなそんな風に言うよね。
おかんもハマってるわ。もういい、好きにしたら?
何ちゅうひどい言い方。でも怒らず黙っていました。
この紗月とのやり取りを先生にお伝えするのは、本当に申し訳なかったです。
でも正直に書いてFAXで送りました。あぁ辛い・・・。

「過食症完治」「カウンセリング卒業」と言われないのはなぜ?

(俊介先生から「紗月の過食症が治った」とか「カウンセリング卒業」という話しがないのはどうしてだろう。何かきっと理由があるはず。)
面接の日、思い切って俊介先生に尋ねてみました。
俊介先生は、何度かカウンセリングの時に説明してくれた説明パネルを持ってきて、
再びていねいに説明してくれました。
俊介先生:まだ自分の弱みや不安の発言がありませんね。
弱みや悩みは自分の内面のこと。
内面の話ができないうちは、まだ治ったとは言えませんね。
今は80%のところまで治ってきていると言えるでしょう。
けれど、今治療をやめてしまうと、落ち着き始めた過食が悪化し、
振り出しに戻ってしまうことがあります。
私:そうなのですか。不安や悩みは全く言いません。怒ってはいるけど・・・。
俊介先生:少しでも、悩みの欠片みたいなものが出てきたら
いい兆候ですから見逃さないでくださいね。
 それと身近な人、上司や編集さんとの対応で「こうして欲しいのですが」とか
「こうしてみたのですが」というような、交渉や提案をする場面が出てきたら、
かなり卒業に近づいていると言えます。
私:あぁ・・それはまだまだ遠いような気がします。もう少し、頑張ってみます。
電話カウンセリングで助けられたこと

そして1月、コロナがやってきました。
電車で2時間は、感染が怖くてとても行けません。
思い切って俊介先生に相談してみると、「zoom(ズーム)などを使ったオンラインカウンセリングや電話カウンセリングでも対応できますよ」と提案してくださり、私は電話カウンセリングに変更してもらうことにしました。
電話カウンセリングにしてもらった事で、面談時間や場所の自由度がぐっと上がりました。
電話カウンセリングに変更した時期は、「まだカウンセリング行ってるんか?」「いつ終わるんか?」という紗月からの口撃がひどくなり、少々参っていた時期でもありました。
私は仕事帰りにスーパーの駐車場で電話カウンセリングを受け、何食わぬ顔で家に帰るという、紗月にとっても私にとっても心の負担の少ない方法をとることにしました。この方法でカウンセリングを続けられたことは、本当に助かりました。
こうすることで、紗月からのカウンセリングについての口撃は少なくなり、
紗月の悩みや弱み、上司や編集さんとのやり取りについての話しを集中して聞くことができるようになりました。
【予告】【摂食障害克服】過食症カウンセリング体験手記| vol.5 断る勇気が持てた!卒業に至るまで
コロナや紗月さんの口撃など、日々変化する状況に柔軟に対応していったお母さん。
少しずつ、何でも話してくれる良い関係を紗月さんと築けてきて、このまま少しずつ良くなっていくのかと思いきや・・・。
突然始まる紗月さんの隠れ食べ(家族に隠れて過食)。
その時、お母さんは・・・。
ピンチに次ぐピンチを乗り越えて、『母と娘で乗り越えた過食症体験手記』ついに完結です!
【摂食障害克服】過食症カウンセリング体験手記|vol.5 断る勇気が持てた! 卒業に至るまでは、こちらから↓(2025.11.14掲載予定です)



 
                    

