リストカットの背景にある「それぞれの生きづらさ」を、ベテランカウンセラーが丁寧に解きほぐし解決に導くプロセスが書かれています。
なぜリストカットをしてしまうのだろうか。自らを傷つけるというその異様なエネルギーは、いったいどこから湧いてくるのだろうか。そこに見え隠れするのは、頑張りすぎて疲れ切っているのに、また頑張ってしまうという生きづらさであり、それでも必死で生きている彼女たちの姿だ。家族療法の専門家がリストカットの謎に迫り、本人と家族の苦悩を丁寧にほぐし解決へと導く、4つのストーリー。
謎と思われたリストカットの世界から、カウンセリング治療を通して真の姿がみえてきた。やがては対応できるケースが増え、カウンセリングの幅が広がった。
Q1:血のついたタオルやティッシュが娘の部屋に…
Q2:リストカットの傷を見つけたとき、どうすれば…
Q3:リストカットの傷の手当はどうしたらいいかしら…
Q4:子どもが持っているカミソリやナイフは、取りあげていい…
Q5:リストカットをしそうな時、親としては外出を控えたほうが…
Q6:子どもをカウンセリングに参加させたほうがいいですか…
Q7:「リストカットしてやる。死んだら親のせいだ!」…
Q8:子どもが「不安で不安でしょうがない」と…
Q9:「私は生きてる値打ちがない」「人生の目的なにもない」…
他
私は病院で医師としてリストカットに携わっていたころと、その後のカウンセリングでの治療を含めて約30年がたちました。リストカットはその症状のありようが激しいだけに、現場に携わる人たち――外科医、心療内科医、精神科医、看護師、家族、本人、学校の先生、養護教諭などに、強く『何とかしなければ』というメッセージを投げかけ続きます。誰もが無関心でおれない症状です。私もその一人です。
いろんな解決法がだされてきましたが、リストカットの原因についてはまわりの人たちや本人も納得できるような希望のある説明解釈というのは与えられていませんでした。
本書をお読みいただければリストカットという一見驚かされる現象をみても、建設的に解決できる症状であると理解していただけるのではと期待しています。
年を追って増えていくリストカットのクライアントさんたちを気にしながら、執筆をすすめてきました。そしてやっと本書を手にして、正直ホッとしてます。
本書を読んでいただければ「リストカットは謎めいた行為でもなく、自暴自棄からくる衝動的な行為でもない。もっと本人の現実に根ざした行動であり、解決十分な症状である」ということが理解してもらえるものと思います。その手がかりとしての本書ができあがったという安堵感を感じています。一人でも多くの方たちに読んでいただき、リストカットの真相をわかってもらえたらと思います。