関西テレビで摂食障害(過食症)の番組が放映「キッチンイーター」(2013.11.25)

摂食障害(過食症・拒食症)のカウンセリング治療は、淀屋橋心理療法センター大阪 摂食障害専門外来で行っております。(06-6866-1510)

♦ キッチンイーター(Kitchen Eater) 

先日関西テレビで「摂食障害・キッチンイーター」についての放映がありました。2才の娘さんをもつお母さんが、夫さんとカウンセリング治療に来所しました。マスコミで「摂食障害」が取り上げられました。番組のなかで耳に残ったのが「キッチンイーター」という言葉でした。「台所で食べる人」文字通り訳すとこうなります。正しい理解を得るためにネットでしらべてみると次のように書いてありました。(要点をまとめてみると次のようになります)

『主婦が台所で一日中食べ続けて病気が進行することから「キッチンイーター」と呼ばれる。本人も周囲も摂食障害「過食症」という病気だと気がつかないまま病状は深刻化し、場合によっては命を落とすこともある。・・・』

出典:産経新聞 2007年6月27日『中高年女性に広がる「摂食障害」無理な減量ダメ』

摂食障害「過食症」のカウンセリング治療に携わって30年になりますが、この「キッチンイーター」という言葉を何度か聞いた事があります。上記の説明とはまた違った状況の「キッチンイーター」だったと記憶しています。ケースのなかの過食症本人のエピソードを思い出しながら書いてみました。

事例1:ヤンママの美香さん「私はキッチンイーター。娘が3才までに過食症を治したい」

結婚して5年になる美香さん(仮名)が摂食障害(過食症)のカウンセリング治療に来所しました。そのときの動機付けが「娘が3才になるまでに、私の過食症を治したいんです。私のマネをして娘も過食しだしたらえらいことだと思って」。

美香さんは娘が生まれてから過食がしにくくなっていました。2才をすぎた頃やってきたおばあちゃんに「ばーば、ママね、おやついっぱい、キッチンで、ミキもほしいな」と言われて、ハッとしました。「もうわかる年齢になってるんだ。あの子がいる前では過食しないほうがいいな」と心に言い聞かせました。

ある日娘はお昼寝をしてると思ってキッチンでこっそりと過食していたら、ドアのかげからジーと見つめている娘に気がついたのです。そのときは心底ドキッとしたそうです。子どもはまだ2才半だから、過食とかはなにもわからないでしょう。「ママなんかおいしそうにたべてるなー」くらいでしょうが。

「食べ物の恨みはこわい」と言います。やはり記憶に残るようなことがあってはいけないと、美香さんはカウンセリング治療を受けて本気で過食症を治す決心をしたということです。

事例2:里美さん(23才)の家族みんなが過食嘔吐のよき理解者

「結婚してからは私、キッチン・イーターになってますね。夫は私の過食症を知っいますが、食べてる姿を見たことはありません」という結婚して一年になる里美さん。結婚まえ実家にいるときは母親がいても弟がいても平気で食べていたといいます。リビングのソファーでテレビを見ながら食べるのが楽しみだったそうです。弟もそばにやってきて「お姉ちゃん、おいしそうやな、ぼくにもちょうだい」と言ってくることもあったとか。家族内で過食嘔吐はオープンになっていました。だから誰にはばかることもなく、食べ吐きができていました。その自由さがいけなかったのか、5年たっても過食嘔吐をやめることができませんでした。「今度こそやめるぞ!」と決心はするのですが、もう一踏ん張りでいつも崩れていました。

結婚したら過食嘔吐はやめられる?

里美さんは結婚を機に「よし、今度こそ過食嘔吐はやめてみせるぞ」と一大決心をしました。『夫の前では食べない』と決めたのです。結婚して3ヶ月ほどは過食をしたいという気にもならなかったので、このままいくかなと思っていたのですが・・・。

「あーあ、また食べちゃいました」と、里美さんは再びカウンセリング治療にやってきました。結婚したら夫に過食嘔吐を打ち明けるか否か。里美さんは「彼には打ち明けないで、頑張って治します」と言っていた。これが思ったより大変だとわかってきました。夫が在宅しているときに食べたくなったらどうするか?過食のスイッチがはいっているのに、食べるのをガマンしなくてはならない苦しさ、イライラ。夫の語りかけにも「え、そんなん知らないわよ!」といったふうに満足に受け答えができない状態がなんどもありました。

いつしか里美さんはこっそりとキッチンに隠れて食べたり、夫が寝てからそっとキッチンで「食べて吐く」といったキッチン・イーターになっていました。

夫にキッチンイーターであることを打ち明けて

「このままだと隠れて食べるコソコソ過食ばっかりで、もうガマンできない」と、里美さんは夫に自分がキッチンイーターであることを打ち明けました。夫は「気がついていたよ。おかしいと思っていたんだ。過食嘔吐は君の病気なんだから、治るためには僕も協力するよ」と、言ってくれました。その言葉を聞いて里美さんは涙が出るくらいうれしかったと言います。

それ以来カウンセリング治療には夫と里美さん二人で来所しています。キッチンイーターではなくなった里美さん。「夫が理解し協力してくれてうれしい。今度こそ夫のためにも頑張って治します」と話していました。

2013.12.05  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》福田俊一

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

シリーズ記事

2013.12.05

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