社交不安障害とは

社交不安障害(SAD)とは

社交不安障害(SAD)とは

社交不安障害とは、注目が集まる場面や人前で異常なほどの不安や恐怖を感じてしまい、目まいや吐き気など様々な症状が出る精神疾患のことを指します。この記事では、社交不安障害の原因や特徴、症状や治療法などについて解説します。

社交不安障害(SAD)とは、どんな病気?

社交不安障害は、英語では「social anxiety disorder」と表記され、略して「SAD」と呼ばれています。以前は、「あがり症」や「対人恐怖症」などと呼ばれていましたが、2008年に「社会不安障害」に名前を変え、2013年には「社交不安症/社交不安障害」となりました。

日本では1930年代から「対人恐怖」についての研究がはじまり、地域や民族、文化環境によって発症する「文化結合症候群(精神障害)」と考えられてきました。しかし、1980年以降「対人恐怖」と非常に似ている「社交不安障害」が世界各国において高頻度で発症していることが、明らかとなったのです。

社交不安障害の原因について

社交不安障害の原因は、未だはっきりとわかっていません。しかし、世界中の研究者が解明に取り組んでおり、最近の研究では「セロトニン神経系とドーパミン神経系の機能障害により発症するのではないか」と考えられています。

約140億個もの神経細胞が脳にありますが、神経伝達物質の制御を受けることで同調し、脳全体の機能を調整しています。このバランスが崩れてしまうことで、社交不安障害を発症しているのではないか?と考えられています。

社交不安障害の症状とは?

社交不安障害には、どのような症状があるのでしょうか?一緒に確認していきましょう。

・症状が現れやすい場面

朝礼や会議などの人前で何かをする際に、症状が出やすくなります。特に、「このまま失敗して恥ずかしい思いをしたらどうしよう…。」などと考えると、異常なほどの不安や恐怖感が生じるのです。

また、道を歩いているときに遠方から近づいてくる少し苦手な知人を見つけると、どう挨拶しようかとすごくそわそわします。変な雰囲気を作ってしまい、相手との空気が気まずくなったと落ち込みます。(古典的な対人恐怖)

その他にも、「電話対応」や「美容院」、「人前での飲食」「人前で字を書く」など、誰かの存在が気になりやすい場面がきっかけとなる人が多くいます。

・心身に生じる症状

・異常な不安感や恐怖を感じる
・頭が真っ白になってしまう
・動悸がし、息苦しくなる
・目まいや吐き気がする
・異常に口が乾く
・緊張して赤面してしまい、手足や声が震える
・暑くないのにも関わらず、異常に汗をかく など
・いたたまれなくなりその場から逃げ出す

対処法や治療法はあるの?

社交不安障害には、どのような対処法や治療法があるのでしょうか?まずは、対処法から見ていきます。

対処法

1.対処法

社交不安障害の人は、「周りの人と比べて、私はダメな存在だ」などという考えを持っている場合がめずらしくありません。つまり、自己肯定感が低いことが影響して、ネガティブな考え方になってしまうことが多くあるのです。そのため、強い不安や恐怖を感じ、症状が出現してしまう悪循環に陥るケースが存在します。

このネガティブな思いを緩和するためには、「ありのままの自分を受け入れる」という考え方が大切です。近年注目されている方法の一つがマインドフルネス瞑想です。

・【マインドフルネス瞑想】

瞑想と聞くと、宗教やスピュリチュアルな物をイメージする人も多いでしょう。しかし、瞑想には科学的根拠を持つ、「心を鍛える方法」とも言われています。

20年ほど前に医療測定器などの進化により、「脳内をリアルタイム」で可視化することができるようになりました。そのため、瞑想中にどのようなことが脳内で起きているのかも分かるようになったのです。

瞑想の特徴は、「今という瞬間」に目を向けることで、ありのままの自分を大切にできるようになることを目的としています。同時に、「幸せ・感謝・愛情」をしっかりと感じやすくなるため、ポジティブに物事を考えられるようになるとも言われています。瞑想を続けることで少しずつ脳が変化していき、このような効果が期待できるのです。

2.治療法

社交不安障害の治療法には、以下のようなものがあります。ひとりひとりにふさわしい治療法を見つけることが回復への近道です。

・心理療法(認知行動療法)

心理療法でも「ありのままの自分を受け入れる」ということを目標にしています。

例えば、「白か黒」以外にも「グレー」な考え方ができるようになると、心がきっと軽くなるはずです。そのため、「自分はこうあるべきだ」などの思考のクセに気づき、それを修正することで適切な捉え方ができるようになります。その結果、自分を大切にできるようになるのです。

・自分自身のストレスに気付くことで、問題を整理していく
・その問題はどのような場面で起きているのか?どのような感情になるのか?を見つめていく

などの方法で、自分自身を客観視し、ネガティブに感じる部分などを少しずつ調整していきます。そうすることで、ストレスとなる考え方を手放し、感じてしまうストレスの量そのものも減らしていくことが可能になるのです。

・森田療法

日本の精神科医で森田正馬という人が作った日本発祥の心理療法です。不安に執着しがちなクライアントに対し、不安を否定せずありのままに受け入れるという姿勢を説き大きな治療成果を上げてきました。 生活の発見会という自助グループが各地で活動しています。不安に執着しすぎる人に有効な治療法です。

・薬物療法

不安や恐怖感が強い人は、その感情を緩和するために薬物を使用する場合があります。薬を服用することに、抵抗を感じる人もいるかもしれません。しかし、しっかりと用法用量を守ることで、あらゆる症状から守ってくれる可能性が高いのです。もし、薬への依存が気になる場合でも、医師としっかり相談し、プランを立てていくことができます。

社交不安障害の人には、抗不安薬や抗うつ薬、必要時には睡眠薬などが処方されることが多いです。ただし、薬には様々な種類があるため、「自分に合った薬」を見つけることが大切になります。

治療法は色々ありますが、人によって効果が違いますので、自分にあった治療を見つけることが大事です。

まとめ

身近な人のサポートこそ、回復への近道となる

身近な人のサポートこそ、回復への近道となる

家族などの身近な人から社交不安障害の本人を見ていると、家では明るくしていたり、中には冗談を言うのが好きな人もいるので、「本当に病気なのだろうか?」と不思議に感じることもあるでしょう。しかし、そう思ってしまうのは、本人が家族や身近な人に対して「信頼をしている証拠」だからです。

ずっと一緒に過ごしてきた家族や昔から知っている友達などには、緊張することなくありのままの自分で接することができ、穏やかに過ごせる人も多いとされています。しかし、そのような環境から一歩外れると、異常なまでの強い恐怖や不安感などを感じ、心の底からSOSを出す状態になってしまうのです。

出来る限り、本人とクリニックなどを一度受診し、病気について理解を深める行動ができれば、治療もスムーズに進みやすくなるでしょう。

2022.11.20  

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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