双極性障害について

ストレスが多い現代では様々な精神疾患が注目されていますが、双極性障害はおよそ1000人のうち4人~7人がかかると言われています。そのため、精神疾患の中でも決して珍しいものではありません。特に、双極性障害は精神的なストレスがかかりやすい、20代~30代で発症することが多いとされています。

しかし、幅広い年代で発症する可能性がありながらも、まだ詳しい研究が進んでいないという現状も。この記事では、双極性障害について詳しく解説します。

双極性障害とは

双極性障害とは

双極性障害とは、躁状態(躁エピソード)または軽躁状態(軽躁エピソード)と、うつ状態を繰り返す精神疾患です。また、双極性障害は気分障害の1つとされており、「躁うつ病」と呼ばれることもあります。

双極性障害には、「双極Ⅰ型障害」と「双極Ⅱ型障害」の2種類があります。

双極Ⅰ型障害の躁状態は、社会生活に支障をきたすほどの激しいもので、夜も眠らずに動き回る、派手に散財するなどの行動が見られます。一方、双極Ⅱ型障害は、社会生活における著しい支障はない程度の躁状態ですが、本人が異常だと自覚することは少なく、まわりの人も気づきにくいケースがほとんどです。

双極性障害の躁状態による問題行動は、社会生活において大きな問題を引き起こす場合もあるため、注意が必要です。また、双極性障害の発症率は、双極Ⅰ型障害が1%以下、双極Ⅱ型障害が1~2%だと言われています。

双極性障害の症状

次に、双極性障害を発症すると、どのような症状が現れるのかについて見ていきましょう。ここでは、躁状態とうつ状態、それぞれに分けて症状を説明していきます。

・躁状態

双極性障害の躁状態の時は、主に「気分が高揚する」「怒りっぽくなる」「開放的になる」「気力や活動性が増加する」などの状態が、1日の大半で見られます。

・うつ状態

双極性障害のうつ状態の時期は、「1日中憂鬱な気分」「眠れない」「眠り過ぎる」「好きだった趣味に関心がなくなる」「食欲が低下する」「何事にも億劫で、体を動かしたくなくなる」などという状態が1日の大半を占めるようになります。

双極性障害の原因

双極性障害の発症原因は、現時点でははっきりと解明されていないのが現状です。しかし、症状が似ているうつ病と比較した時に、遺伝的な要素の影響が大きいということが分かっており、双極性障害の発症には遺伝的な背景も関係しているのではないかと考えられています。

また、遺伝的要因に加えて、当人の性格や日常的に感じているストレス、慢性的な過労、社会生活を送る上で抱えている心理的葛藤などが加わると、双極性障害の発症リスクも高まるとされています。

双極性障害の検査方法や診断

双極性障害は、発症のメカニズムがはっきりと解明されていません。そのため、明確に双極性障害だと確定させるための検査方法も確立されていないのが現状です。しかし、双極性障害の診断基準は、次のように定められています。

・双極Ⅰ型障害

:少なくとも1回の明確な躁病エピソードがあり、通常は複数回の抑うつエピソードがあること。



・双極Ⅱ型障害

:少なくとも1回の軽躁エピソードがあるものの、明確な躁病エピソードは確認されない。かつ複数回のうつ病エピソードが存在すること。

双極性障害の治療方法

双極性障害は早期に治療を開始すれば、ある程度症状をコントロールしながら、一般的な生活を送ることが出来ると言われています。また、双極性障害の治療目標は、躁状態やうつ状態を緩和して、再発を予防する点が重要視されています。

・薬物療法

双極性障害の中でも、特に双極Ⅰ型障害の薬物療法は、長期間にわたって継続していくことが大切です。気分を落ち着かせる「気分安定薬」や「抗精神病薬」などを主に用いながら治療を行っていきます。

気分安定薬は、双極性障害の躁状態とうつ状態の治療と予防に、有効な薬物だとされています。また、抗精神病薬を併せて使用することで、躁症状の治療の効果がより期待できるでしょう。

・心理社会的治療

心理社会的治療は、当人自身が双極性障害の知識を深め、病気を受け入れながら自分をコントロール出来るようになることを目的とする治療方法です。そのため、日々の気分や症状を記録し、客観的に捉えられるようにしていきます。心理社会的治療の中には、「認知行動療法」や「対人関係・社会リズム療法」「家族療法」などがあります。

なお、双極性障害の治療においては、家族からの理解も重要になります。家族に協力してもらえる環境で病気と向き合い、再発を防止するために服薬の継続をすることが必要です。

また、双極性障害の方は、些細なことでも自分を責めてしまう傾向が多く、物事を肯定的に捉えられる練習をして、双極性障害のうつ状態を乗り切れるようにします。さらに、生活リズムの乱れによって悪化する場合も多いため、規則正しい生活リズムの在り方を治療に組み合わせながら、進めて行くことも大切です。

・当センターの家族療法の実績

双極Ⅰ型障害に、当センターの家族療法は効果が期待できません。
双極Ⅱ型障害の場合には、大変効果が上がるケースもありますので、ご相談ください。

双極性障害の再発予防方法

双極性障害の再発予防方法

双極性障害は発症原因が明確になっていないため、残念ながら確実な予防方法は現在のところありません。しかし、再発防止を徹底することで、発症前と同じ社会生活を送ることが出来ます。

双極性障害の再発予防方法としては、服薬を忘れない、心理社会的な治療を継続することが大切です。特に双極性障害は、生活リズムが崩れると再発しやすいと言われているため、たった一晩徹夜しただけでも一気に症状がぶり返す場合も珍しくありません。

そのため、治療中にしっかりと自分自身の症状の現れ方の特徴を把握し、行動面でどのように社会的な支障が出やすいのかを確認しておくことが、重要です。

双極性障害の公的な支援

最後に、双極性障害に関する公的な支援についてご紹介しましょう。双極性障害を発症した際に受給できる可能性がある制度としては、障害年金です。障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるような場合に受け取ることができ、双極性障害はその対象となっています。

双極性障害による障害年金を受給するためには、病状の経過(病相・期間・頻度・発病時からの状況・最近1年程度の病状の変動状況など)の診断書が必要になります。医療機関で可能な限り病状を詳細に記載してもらったうえで、申請すると良いでしょう。

ただし、障害年金を申請するには、初診日より1年半が経過しても症状が完治していないケースのみが適用されますので、その点には注意が必要です。

まとめ

双極性障害は、今のところはっきりとした原因が解明されておらず、治療方法も対症療法が中心となっています。しかし、気分安定薬や抗精神病薬を継続的に服薬することで、症状が大きくコントロール出来るとことも分かっています。

必ず完治が見込める疾患ではないものの、薬物療法と社会心理的な治療を続けて行けば、発病前と同じ生活を送ることが可能です。さらに申請をすれば、受けられる公的支援もありますので、適切な支援を受けつつも気長に治療をすることが大切になります。

双極性障害のまとめ

2022.12.21  

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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