「すばらしい協力体制ですね」という言葉をいただいて

ひきこもりケースの面接を終えたとき、お父さんがこう言われました。「なかなかいいスタッフさんですね。うらやましいです。すばらしい協力体制で」と。そして笑顔でお母さんといっしょに帰っていかれました。

いきさつはこうです。面接のなかでお父さんが、「ボイスレコーダーの録音時間って、どのくらいなんでしょうか?」と、聞かれました。私はまったくのキカイおんち。「さあ?」と言いながら、スタッフに聞けばわかるかもと思い、聞きに行きました。「機種やメーカーによってちがうから」と、すぐに答えはわかりませんでした。それが面接も終わりに近づいたころ、一枚の紙をもってそのスタッフがやってきました。それには「ボイスレコーダーのことが詳しく書かれています。「メーカーに電話して聞いてみました。だいたいこれくらいだそうです」と。お父さんにお見せすると、たいへん喜ばれました。

お父さんもある会社の部長職として勤務しておられる方です。息子さん(20才)の「ひきこもり」でご相談に来所しておられます。

息子さんは高校三年のころポツポツ不登校からひきこもりになってしまいました。三年がたつわけですが、ケースがスタートしたのは七ヶ月まえでした。アドバイスをおだしし、ご両親であれこれとがんばっていただきました。そのかいあって息子さんは一月前から、ある教室に通うようになったのです。「マンガが好きで、自分でも書いてみたい」、そんな気持ちから、近くの絵画教室へデッサンを習いに。「オレな、先生の話し、録音したいねん」と言い出したので、ボイスレコーダーを買ってやったのです。ところが「これは二時間くらしか録音できひん。新しいのを買ってくれ」と言い出したとか。「そんなはずはないやろ。もっと長時間できるはずやで」と言っても聞きません。取り説もどっかへやってしまって。

お父さんとしては新しい機械を買うのがいやというよりは、きちんと正確なことを息子と話し合いたい。それには親が知識をもっていなくては、というお考えだったようです。お母さんと顔を見合わせながら、その紙を大事そうにカバンにしまわれました。

2006.06.21  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》スタッフM

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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