紹介の仕方一つで親御さんの動機づけがこんなにも違ってきます
ある日のこと、午前中にAさん、午後にBさんがそれぞれ不登校の相談にこられました(事前相談)。どちらの方も学校の先生からの紹介でお母さんお一人の来所でした。カウンセラーが入室すると、まずは挨拶に始まり、次に相談内容についての状況説明を求めます。私どもではだいたいのあらすじを親御さんの方からお話しいただき、他にお聞きしたいことがあれば後でカウンセラーの方から質問させていただきます。
Aさんはとてもしっかりとした口調で説明して下さいました。お話の内容も、不登校のきっかけ、行きしぶりを始めた頃の登校パターン、現在の家庭での様子、親子の関係、学校との連絡など、まるで前もって話す内容を用意しておられたかのようにスムーズにお話し下さいました。カウンセラーの方も十分なお話がうかがえた事で解決の見通しについても明確にお答えすることができました。そして最後に決まり文句です。「私どもで十分にお手伝いできると思います。しかし、通っていただく上で様々な課題をお願いすることになると思います。意外としんどいこともありますが、大丈夫ですか?」。お母さんはすかさず「はい、そのつもりできました!」と、きっぱりと言われました。あらためてうかがうと、ご紹介くださった先生から「淀屋橋はしっかりと診てくれるところです。お母さんも行くからにはしっかりと覚悟を決めて行って下さい」と言われたそうなのです。
一方のBさんですが、午前中にお目にかかったAさんとは対称的に、ずいぶん伏し目がちに座っておられました。カウンセラーの方から説明を求めてもずっと沈黙のままで、いつまで待ってもお話し下さる様子がありませんでした。やむなくカウンセラーの方から質問しても、お返事は「はー」「えー」などすぐに話がとぎれ、とても重たーいムードが漂いました。そこで、午前中のAさんのこともあったので、学校の先生の紹介の仕方をうかがうことにしました。お母さんは「いやー・・・、先生からお電話があって・・、一回ここに来るようにって言われたんです」と、重たい口調でとぎれとぎれに言われました。当センターのことを何も知らない上に、何も考えずに来られたのだそうです。
私どもではカウンセリングをお引き受けする際、まずは親御さんの「動機づけ」を見極めます。最優先事項といってもいいぐらいです。しっかりとした動機づけをもって臨んでいただけないと、中断(挫折)しやすいだけでなく、対応のアドバイスをお出ししてもなかなかうまくいかないのです。逆に、いくら状態が悪くても親御さんの動機づけがしっかりしていれば、事態が急展開(好転)することがよくあります。実際の成功例をふりかえってみても、うまくいくかどうかは状態の「軽い重い」ではなく、親御さんの動機づけ(心構え・積極性)がしっかりしているか否かなのです。
淀屋橋心理療法センター
所長 福田俊一
小川和夫(不登校・非行専門カウンセラー)
