2.「好きな物さがし」できっかけを見つける|ひきこもり カウンセリング治療専門外来 ニート(NEET)

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2.「好きな物さがし」できっかけを見つける

長年のひきこもりで、自分がわからない

一年以上のひきこもり生活が続くと、だんだんいんろんなことがぼんやりしてくる。特に「自分ってなに」が、ぼんやりしてくると、泥沼サイン。洋次が来所したときすでに四年近くが経っていた。カウンセラーは洋次にいくつか質問を投げかけてみた。予想したとおり反応が、はかばかしくない。

カウンセラー:なんで今みたいに、ひきこもるようになったんかな?

洋次:えーと、・・・・

カウンセラー:お父さんになんか言われたの?

洋次:そうやったかな。はっきりおぼえてません。

カウンセラー:学校はどうしたの?高校の時に不登校になったとお母さんからお聞きしましたけど。

洋次:はあー、どうやったかな。大学に入ったんやけど、もうええわ、と思って。

カウンセラー:せっかく入ったのに、なんかいやなことがあったの?

洋次:なんとなく。おもろないなーって。

カウンセラー:いま家でどんなことしてすごしてるの?

洋次:えーと、なにしてるんか・・・テレビ見て、マンガ読んで、たいてい寝てます。

カウンセラー:好きなテレビ番組は?マンガもお気に入りのマンガってありますか?

洋次:べつに・・・これって・・・

今聞いたようなことは前回の面接で母親から聞いて、カウンセラーは知っていた。洋次がどのように答えるかを聞くために、同じような質問を投げかけてみたのだが。

両親にひっぱられていやいや面接を受けにやってきたのか。それとも聞かれるのがいやなのか。カウンセラーは、はじめはそう思っていた。しかしだんだんわかってきたのだが、そうでもないようだ。一日中自分の部屋のなかにひきこもっているせいで、相手の言葉に反応するという動きが、だんだんにぶくなっているらしい。時には考え込むような表情をみせたり、言い出そうというしぐさをみせたりする。辛抱強くまっていると「えー、それは・・」と、話しはじめたりする。

長期にわたるひきこもりで一番問題なのは、自分についてのいろんなことがわからなくなること。「何が好きで、何がきらいか」「自分は何をしたいのか」「友達がほしいのかほしくないのか」「どんな物が食べたいのか」「どの服きたらいいのか」「お風呂に入りたいのか入りたくないのか」など。

まず「好きな物さがし」で、元気を引っぱり出す

洋次の元気を引っぱり出すには、どうしたらいいか。何にも興味を示さないし、反応もにぶい。カウンセラーは手がかりをさがすため、「好きな物さがし」をしてみようと考えた。「何が好きで、何が嫌いか」もはっきりしない状態では、どの方向に導いていったらいいかわからない。せめて好きな物がわかれば、それを軸にして話題を展開させることができる。カウンセラーは洋次の面接に使うため、いろんな本や雑誌を用意した。

「月刊スポーツ」「パソコンゲームの楽しみ方」「ギターを弾く」「家庭菜園のすすめ」「旅へのいざない」「うまいもの店450」「家具&収納カタログ」などなど。

「洋次君、きょうはですね、この本のなかから自分の気に入った記事を教えてくれませんか。どれでもいいですから。どうですか、この本なんか?」。カウンセラーは洋次が大学時代ギタークラブに入部していたということを聞いていたので、ギターの雑誌を手渡した。しかし洋次は「はあ」と、気のなさそうな返事。意外にも反応はなかった。ところが家庭菜園の本を見ているとき、「あ、これ僕つくったことある」と、声をあげた。みるとなすびやきうりの栽培のページだ。子どものころ、お父さんといっしょに庭で苗を植えて育てたことがあるらしい。「いびつな形のなすびしか、でけへんかったんや。そんでもできたときはうれしかったな」と、いつになく表情を交えて話しだした。「きうりもちいそうて、まがってんねん」。お父さんも息子と二人で栽培した初めての野菜ということで、大喜びしていたらしい。洋次のなかには野菜の出来映えよりも、お父さんと二人でやったことがとても楽しかった思い出になっているようだ。そんなことを話している洋次の顔に、わずかだが元気さがでてきていた。

「これだ、この話題で会話をふくらましていこう。それにもしうまくいけば、お父さんとのパイプも野菜栽培でつなげるかもしれない」と、カウンセラーは思った。

根気よく好きな物さがしを続けて

それからは、家庭菜園の本のなかで気に入った記事をはさみで切り取っていく作業にはいった。「え、切ってしまってええんですか」と、洋次はびっくりしたように聞く。こんなきれいな写真や絵のページをきりとるのが、もったいないという気持ちがあったという。しかしこれが元気の出る糸口になるのなら、安いものだ。「もちろんですよ。気に入った記事があったら、遠慮なく切り取って」と、入れる箱を用意しながらカウンセラーは話しかけた。

それからも「好きな物さがし」が続いた。「くるま選びGRANDE」を見ていても、今までならただパラパラとページをくるだけだったのが、「すげー!」とか「これ、かっこえー」といった言葉がでるようになった。「オレ、車ほしいな。大学一年のとき免許とったけど、ペーパードライバーやねん」。「免許とってるんやから、ちょっと練習したらできるようになるんとちがうか」と、カウンセラーも話しにのっていく。ここでも父親とのパイプをつなぐきっかけが作れそうだ。

なにが功を奏するかはまだわからない。あせらず、じっくりと洋次の「好きな物さがし」につきあっていこう。

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福田 俊一(所長、精神科医)
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 息子にカウンセリングの話をしても行きたがらないと思うのですが、どうしたらよいでしょうか。

 カウンセリングは初めてで、どんな場所でどんな形でするのか不安です。


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