4.美雪は半年後、母親とデパートにでかける|ひきこもり カウンセリング治療専門外来 ニート(NEET)

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4.美雪は半年後、母親とデパートにでかける

友人から結婚式の招待メイルがきて

母親の美雪へのこまやかな対応は折にふれ続けられた。美雪の好きな物を中心に語りかけ、美雪が話しの中心になるように会話も工夫された。すべて面接でカウンセラーと話し合って、導き出されたアドバイスにしたがってなされたことである。家で実際にやってみてすぐに報告し、相談に乗ってもらえるので、母親も安心して進めることができたようだ。

そんな努力が効果を表しだしたのか、美雪のほうから母親に「お母さん、私頼みたいことあるんやけど」と言い出した。「なんや、なんでも言うてみ。お母さんのできることやったらなんでもするで」と、母親も受ける。よく聞いてみると、以前働いていた商社の友人の一人からメイルが入ったという。その人が結婚することになって、美雪にも結婚式に出てほしいというのだ。

美雪:私がこんな状態になってるって、知らんのんやと思うわ。だって結婚するゆうてやめたやろ。せんかった、ゆんは知らせたけど、こんなひきこもりになってるとは思ってへんねんやわ。

母親:そうか、そらそうやろな。

美雪:そんでな、どないしたらえんやろ。出席してほしいゆうてきてんねん。

母親:それはうれしいことやな。

美雪:どないしたらええと思う。私、わからへん。ここ二年も外に出てへんし。誰にもおうてない。こんな状態で結婚式なんか、でとうない。そやけど友達は大事にしたいし。

母親:そしたらな、とりあえずお祝いだけ先に贈ったらどうや。

美雪:そうか、そういう手もあるな。ほな私、カード書くわ。お母さん、一緒について行ってくれへん。

母親:ああ、ええよ。いつでもいっしょに行ってみよか。

それから一週間後、美雪は母親と二年ぶりに外出した。デパートに友人の結婚祝いを選びに。洋服はこれでいいかとか靴やカバンはと、ひとしきりてんやわんやの時間を過ごして、ようやく決まった外出姿だった。商社に勤務していたころの姿にもどった美雪をみて、母親は涙が出るくらいうれしかったと後で話していた。面接をスタートして半年がたっていた。

父親への反感を抱いた原因が見えてくる

母親との関係はかなり改善された。二人だけなら食事も階下のテーブルでいっしょに食べるようになった。しかし父親とはなかなかうちとけなかった。そこでカウンセラーは、父親への不満やぐちを美雪の口から出てくる方法はないかと考えた。美雪の心のなかにわだかまりが大きくなって沈んでいるにちがいない。これを浮上させないと、小手先の対応だけを期待しても難しいだろう。しかし今でも顔をみると避けるというのが現実だ。よほど対策を練らないとうまくいかない。面接室で両親を含めて三人で、対応を検討した。

カウンセラー:いつごろからこんなにお父さんを避けるようになったんですか。

父親:はい、それが・・・。なあ、おまえ、おまえが病気になったやろ。あの頃からとちがうか。

母親:そうですねん。美雪がいうには『お父さん、お母さんが病気やゆうのになんもしはらへん』ゆうて。

父親:なんもせんことないがな。お医者さんへの送り迎えやってたやないか。

母親:いや、家のなかのことしか美雪にはみえませんやろ。おかゆさんたいたりとか、りんごすったりとか、みんな美雪がしてくれてましたんやで。ほんで『お父さんゆうたら、お母さんのこと頼むで、ゆうて私になにもかも押し付けて』と、ぐちこぼしてましたわ。

父親:そうか、そら気づかんかったな。それからやろかな、私を避けるようになったんわ。

両親との話をしながら、カウンセラーは次の対応のイメージがわいてきた。もう一度母親が病気になって、それを父親が親身に介抱するというストーリーだ。二人に話すと「やってみます。私もう一回、あの時の病気になったふりをしたらええんですね」「わかりました、今度は私が家内の介抱を親身になってするゆう役割をとればええんですな」。両親ともおおいに乗り気である。

これだけの事で美雪の心のわだかまりが解けるとは思わないが、父親とのパイプをつなぐきっかけになるのではないだろうか。細かな打ち合わせがなされ、実行への段取りが組まれた。さてこのシナリオはうまくいくだろうか。カウンセラーは次の面接で両親からの報告を心待ちにしていた。

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 息子にカウンセリングの話をしても行きたがらないと思うのですが、どうしたらよいでしょうか。

 カウンセリングは初めてで、どんな場所でどんな形でするのか不安です。


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