1.ひきこもりの第五段階にいたって来所した両親|ひきこもり カウンセリング治療専門外来 ニート(NEET)

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1.ひきこもりの第五段階にいたって来所した両親

結婚を見こして8年いた職場をやめる

美雪が自分の部屋にひきこもるようになったのは、2年前。それまでは大阪の本町で商社に勤めていた。短大を出てからの勤務だったので、8年間になる。そこをやめることになったのは、女性ならよくある「寿退職」。皆に祝福されての良い形の退職であった。

問題は、お見合はしたけれど、結婚はまだ決まっていなかったこと。親の話から「もうほとんど相手の方もその気らしい」とわかり、「それじゃ、もうやめよっと」という流れだった。年が重なるに連れ、同僚たちは一人減り、二人減り。28才になりふとまわりを見回すと、美雪ともう一人30才の独身で主任の先輩しか残っていなかった。渡りに船と、飛びついたお見合。「両親がうまくまとめてくれるだろう」。そんな安易な気持ちで、退職を決心した。

両親のはやとちりで結婚がきまらず、大荒れに

お見合は決まらなかった。親のはやとちりだった。どんな理由があるにせよ、美雪の両親への不信感は増大した。「なんでもっと私のこと、真剣に考えてくれへんの」と、美雪は両親にくってかかった。「そやけど、向こうさんの言い方があいまいやったんやないか」「気にすることないやないか。お見合ぐらいまたしたらえんや」「自分のことは自分でしたらどうや。親ばっかり頼ってんと」といった、両親の言い訳めいた弁解も腹がたった。

「私にとっては人生を左右するくらい重大なことやのに、親の態度はなんや。許されへんわ」という思い。「兄ちゃんばかりかわいがって」といった、小さい頃からの不満。それにも増して見込みちがいで仕事をやめてしまった自分の浅はかさ。わめいたり、泣き叫んだり。自暴自棄になって、大荒れに荒れたが、そんな美雪を両親は受けとめてはくれなかった。腫れ物にさわるように、逃げ腰でしか対応してくれなかった。

とうとう自分の部屋から出てこなくなる

両親が来所したのは、美雪が自分の部屋にひきこもるようになってから二年がたっていた。その間、絵に描いたように当センターで分類した段階別ひきこもりの過程をたどっていた。

母親とはいろんな話をし、不平や不満も口にしていた。自分の意見なども大きな声で主張することもよくあった(第二段階)。それがだんだん家族と話をしなくなり、用事があっても母親にことづてて、用件を伝えるという手間を必要としだした(第三段階)。「おい、美雪、たまには部屋の掃除をせんかいな」と、父親ががらりと美雪の部屋の戸をあけてから、父親の顔をみるのもいやそうにするようになった。顔をあわすのを意図的に避けている(第四段階)。そしてとうとう来所時の状態にいたったというのだ。朝も起きてこないし、食事も部屋に運ばせて一人で食べている。先日父親ががらりと戸を開けて「美雪・・・」と、言いかけたとたん雑誌やケイタイが飛んできた。ただ一人美雪が話しかけていた母親にも、あまり話さなくなってきた(第五段階)。

父親には拒否反応を出すし、母親には暴力とも言えるようなことをして対抗しようとする状態になって、二人は途方にくれて当センターへ駆け込んできたという。「もう困ってるんですわ。あいつにはどうしようもありません」と父親。「あんな子やなかったのに。ええ子やったのに。なんでこんなことに」と、母親は涙を流す。

まずは生活のようすを細かく知ること

いままでのいきさつを聞いたカウンセラーは「なぜもっと早く来所されなかったんですか。お話のなかには、立ち直れるきっかけはたくさんあったと思います」と言った。こじれにこじれてからのケースは、立ち直りに時間とエネルギーが三倍も四倍もかかる。「とにかく現状をつぶさに把握することから始めねば」と、カウンセラーは、今日から次回の面接までの生活状況を細かく話せるよう準備しておくようにという課題を出した。

まったく一言も母親と会話を交わさないということは、考えられない。美雪は話しかけているが、母親がおそるおそるの気持ちでいるから、しっかり聞けていないのだろう。「お茶」と、こういう一言からでも状況を知ることができる。きつい言い方だったのか、頼むように言ったのか。また持っていってやった時の様子は。ひったくるように受け取るのか、それとも「ありがとう」と言うのか。そうした微妙な対応のなかから糸口をつかむため、カウンセラーは生活の細かな様子がまず知りたいと思った。

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福田 俊一(所長、精神科医)
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 息子にカウンセリングの話をしても行きたがらないと思うのですが、どうしたらよいでしょうか。

 カウンセリングは初めてで、どんな場所でどんな形でするのか不安です。


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