淀屋橋の家族療法エコロジカル・アプローチ」その(2)家族をどう見る

十年後と十年前

6月のはじめ、池田の小学校で恐い事件がありました。衝撃をうけた子どもたちの家庭に心理カウンセラーが訪問しているようです。早い心のケアーに「よかった」と思うと同時に、この子たちの十年後を思いやりました。一生消えることのない深い心の傷をどう消化していくのでしょうか。ちょっとした出来事にもフラッシュ・バックのように恐かった光景がよみがえることでしょう。子どもたち一人一人に家族や関係者のきめ細かな対応がとても大事であることはいうまでもありません。

「あんな育てられ方をしていなければ、僕はもっと違う人生を歩めたのに。くやしい」と涙ぐむ23才の青年A君。大学にはなんとか入れたけれど、授業には出られず一年で中退。その後四年間の引きこもり生活を続け、今カウンセリングを受けています。がんばってもがんばっても親にほめてもらえなかった小学生時代。よくできる兄といちいち比較され劣等感にさいなまされた中学時代。「なにくそ」と頑張ってなんとか大学に入れた。けれど親は「あら、よかったわね。今度はいい会社に入ってよ」といわれ、矢折れ力尽きたA君。彼にとってはもう取り戻すことのできない十年間です。

昨日のできごとが今日へ、今日のできごとが明日へと続いていきます。毎日の生活のなかの小さなできごとやさりげない言葉掛け、その積み重ねが子どもの心を育てます。誰にも十年後は見えませんが、しっかりと十年後を見据え、子どもを育てることがどんなに大切か。一つ一つのケースをがそれを教えてくれています。

エコロジカル・アプローチは家族の全体像を把握

エコロジカル・アプローチの診療の仕方を説明するときよく使われる「郡盲、象をなでる」という話。「郡盲、象をなでる」というお話があります。これはエコロジカル・アプローチの診療の仕方を説明するときよく使われます。話しをすすめましょう。インドに全盲の人たちが何人か集まって話し合っていました。「象とはどでかくて平べったいうちわみたいなものだ」と、耳をさわった人がいいます。「いや、いや、象とは丸太ん棒みたいにどっしりしている」と、足にさわった人は言います。「何いってるんだ。象はな、ふにゃふにゃと長い太いホースみたいだぞ」と、おそらく鼻にさわった人でしょう。みんな各部分では正しい象の姿です。

でも本当はみんなあわせたものが、象の全体像ですよね。

家族にも同じことが言えます。不登校の男の子を例にとってみましょう。母親にしてみれば、朝起きてこない、学校に行かないどうしようもない息子。でも友だち仲間ではゲームソフトをきまえよく貸してくれるいいやつ。学校の先生からみると「宿題はしてこないし、授業中騒ぐし、やんちゃくれの僕」。でも妹は「夜遅く塾に迎えにきてくれるやさしいお兄ちゃん」。一人一人違う面をみているのですが、みんなひっくるめて男の子ですね。お父さん、お母さんにも同じことが言えるでしょう。相手によって状況によって、人は見せる顔が変わります。だから一面だけとらえて「この人はこんな人」とは、言い切れないものがあります。このとらえ方が、治療上重要なポイントをしめています。

解決の鍵はエコロジカルに根ざした生活のできごと

当センターにはいろんな症状の人たちが相談にこられます。不登校摂食障害(過食・拒食)は双璧です。ひきこもり不安、対人緊張家庭内暴力非行ストレスと続きます。

複雑で難しい症状を治すには、本人や家族の一面だけをみていては診断を誤ります。本人や家族から毎日のできごとを細かく聞いていきます。「朝御飯は、一人で、それともみんなといっしょに食べますか」「お風呂は一番でないときがすまないんですか」「きょうだいげんかは鈍なときにしますか」「お父さんとどんな話しをしますか」等。エコロジカルに根ざした生活のできごとを、細かく集めます。まるで畑から土のついた野菜を掘り起こしているような感覚です。

360度の角度から光をあて、観察をし、情報をあつめ、家族の全体像を把握します。このプロセスのなかから、間違いのない適切なアドバイスが導きだされてきます。

2019.04.17  著者:福田俊一

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