別冊PHPに掲載:特集「子どものキズついた心をいやす家族の役割」

アッという間に夏が過ぎました。朝夕が涼しくなり空の色も雲の動きも秋らしくなってきました。でも日中はまだまだ暑いですね。タオル片手に出勤している人たちをよく見かけます。

その暑い夏の8月号に、淀屋橋の記事が掲載されました。遅ればせながらお知らせいたします。内容を次にまとめてみました。

別冊PHP8月号2004(親と子のしあわせと夢を育てる) 【カウンセリング】家族療法のすすめ

家族療法ってなに?

親もいっしょにカウンセリングを受けます。(中略)「いま目の前にある子どもの問題は。自分たちが対応の仕方を学ばねばならないんですね」といった気持ちに変わってきます。 家族療法によるカウンセリングでは、親の当事者意識がしだいに高まってきます。これは子どもが治る上で、とても大切な条件と言えます。

なぜ効果が高いの?

(略)家族のもつ「子どもを伸ばす力」を活性化させていきす。家族がもっている「自然治癒力」を活性化させることで、少しづつ問題解決が可能になります。 家族療法によりカウンセリングでは、親子関係がその子にあった形で、より大きな力を発揮できるよう導きます。

(筆者注:おわかりでしょうか。家族療法では問題を抱えた家族がもともと持っている治癒力を引き出し、家族がお互いに助け合いながら、問題解決にむかう道筋をつくっていきます。2004.09.28記)

事例1:摂食障害「拒食症になった美香ちゃん」

美香(仮名)小学6年身長158cm、体重33Kg お腹が出ていると気にし、お菓子をがまんしだした。だんだん食事の量も減って、朝はトースト半分とヨーグルトだけ。昼はお弁当をもっていくが、ご飯は捨てている。45Kgあった体重が、みるみる減って40Kgをきった。

【初回面接】母親のあせりが裏目に

現在体重は33Kgになっているという。かなり少ない。それでも朝は牛乳をやっと半分コップに飲むようになった。毎朝、朝食のテーブルは、母親の「食べなさい。がりがりでしょ」という金切り声と、「いや、食べたくない」という美香の叫びが飛び交っている。母親が食べさせようとすればするほど、美香はかたくなに食べ物を拒否しやせていった。

「学校を休みたくない」を、ほめながら

美香は意思の強い頑張りやさん。だから優等生でプライドも高い。「私、学校をぜったい休みたくないの」と、強く言った。セラピストは一つの約束をした。「あのね、美香ちゃん、体重が35Kg以上でないと、入院して点滴しなくちゃいけないの。わかる?あと2Kg自分で増やせるかな?死ぬほどつらいことだってことは、わかってるよ。だけどね、35Kgになったら、学校休まなくてもいいし、お母さんから毎朝「食べなさい」って言われなくてもいいんですよ。そのほうが美香ちゃんは、自分の体のことが自分で決められていいでしょう」。 この約束はきびしかったけれど、美香は頑張った。目標がはっきりと35Kgと設定されて取り組みやすかったのと、学校を休まなくていいというのがうれしかった。その日から二週間後、美香の体重は約束の35Kgに増えていた。

お母さんと夜の散歩が克服のきっかけに

夜、お母さんは美香を塾までお迎えにいくことにした。二人で歩いて帰りながら、いろんな話を美香がするのを、母親は相づちを打ちながら聞いている。いつも「食べろ、食べない」でけんか腰の会話しかもてなかったが、だんだん美香は母親に甘えていろんな話をするようになった。いつのまにか、美香の食へのこだわりはうすくなっていた。

事例:2不登校「両親のこまやかな援助で学校へいけた」

拓也(7才、小学2年) 幼い子の不登校は、はじめのうち理由がはっきりせず、漠然とした不安を訴えることが多い。拓也もそうだ。朝起きをしぶりだし、「なんやしらんけど、いかれへん」とか「こわいねん」といった漠然とした不安を訴えていた。

母親のむり強いが事態を悪化させる!!

「はよ起きや。遅れるで」と、母親は毎朝拓也を強引に起こしていた。「学校いやなん、なんでや」と理由を聞いても「わからへん」というので、「怠けてる」という感じしかもてなかったからだ。母親は「この子が不登校になったらどうしよう」という不安からつい押してしまっていたのだが、それがよけい事態を悪化させたようだ。「お腹痛い、頭痛い」といった体の不調を訴えだし、とうとう登校できなくなってしまった。

「先生がこわい」と、ぽつんと一言

面接室で座っている拓也はなにを聞かれるかとビクビクしている様子だった。「野球が好きなんか。どこ応援してるんや。阪神か。金本の兄貴つよいな」といった自分が好きな話題が続くので、少しづつ緊張がほぐれていった。 「なんで学校行くのいやなんや」というカウンセラーの率直な質問にも、ポツリポツリと答えだした。どうやら「こわい」という背景には、担任の先生がからんでいるということがわかった。拓也は算数が苦手。それなのに先生は毎回計算のテストをする。「できなかった人は居残りです。拓也君はいつもできてないね」と名指しできびしい言葉が。ぐさりと心に傷をつけられたように、拓也は学校に行くのがしんどくなってきた。

母親の同伴でなんとか登校に

母親はしばらくのあいだ拓也と同伴登校することになった。「えー、そこまで」と驚いたが、「不安感が強いときは、できるだけ子どもさんと同じ気持ちになって動いてあげてくださ」というアドバイスを受け納得。はじめは教室の前まで、それから下駄箱のところまでと、だんだんと同伴の距離を縮めていった。行きしぶりはあったが、母親と一緒という安心感からか、一月たったころは校門の前あたりから「僕、もういくで」と一人でかけ込むようになった。

父親の協力が拓也に自信を

はじめのうち父親は「なに甘えとんや」という考えだったが、母親の説得で一役かってでることになった。さりげなく「風呂、いっしょにはいろうか」からコミュニケーションをとり始めた。やがて「算数いっしょにやろうか」と声をかけ、毎晩15分一緒に机の前に座った。やがて「お父さん、先生な、ほんまうるさいんやで」と、拓也はグチを言えるようになった。「そうか、いややな」と、父親もしっかりと受け止め「でも算数だいぶできるようになってるで」と励ました。「そうや、このごろ居残りすくななった。やればできるんや」という力強い言葉が拓也から聞かれるようになった。

夫婦の協力関係が問題解決のカギ

夫婦で情報を共有する大切さ

母親はいつも子どもと接していますので、自分の見ている部分が子どもの全てと思いがちですが、子どもはいろんな顔を持っています。お父さんの見ているのは、違った顔かもしれません。日常の細かい情報は母親のほうが良く知っているでしょうから、その日あったことを父親に伝えるということも大切です。問題に直面したときお互いに情報を共有していると、どう解決したらいいか話し合うことができます。両親の意見が一致したからといって、それが子どもにあっているとは限りません。しかし共通の理解があれば、どこを変えれば事態は解決に動くのかさらに話し合いを重ねることもできるでしょう。 父親は仕事に追われ、時間的体力的に協力ができないかもしれません。が、子どもと奮闘している母親を側面から励ましたりいたわったりすることも大切なかかわりです。母親からは「夫は、私の話を聞いてくれるだけでもいい」といった言葉が聞かれます。

子どもの問題は、解決のプロセスが大事

自分たちだけで無理なときは、解決の道筋を教えてくれるプロであるカウンセラーの力をかりましょう。すぐれたカウンセラーは、子どもの持ち味をこわさないアドバイスをだします。また子どもの問題を解決するだけが目的というよりは、そのプロセスを通じて子どもがさらに生き生きとし、成長していくというカウンセリングを目指します。

2019.04.17  著者:福田俊一 増井昌美

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