特性5:「ガンコな子はだめ、きらわれるよ!」って言われても変えられない。これが私の特性だもの

ガンコは摂食障害の人によくみられる特性ですが、はたしてこの「ガンコ」は、ほんとうに困った性格なのでしょうか?ガンコさを貫いて、摂食障害を乗り越えたという人、またガンコさのおかげでいろんなことをやり遂げたという人は多くみられます。

「過食はムリヤリにでも止めさせた方がいいのでしょうか?」

過食症の娘さんをもつお母さんから「過食をムリヤリにでも止めさせた方がいいのでしょうか?」という質問を受けることがよくあります。こんなとき「一度止めてみてください」というアドバイスを出すことがあります。親が止めてみて、止まるようならそれでよし。が、ほとんどの場合は、うまくいかないのではないでしょうか。

摂食障害(過食症・拒食症)の子どもは、「どんなことがあっても、食べることだけは親の言いなりになるものか」と、鉄壁のガンコさをもっています。とりわけ自分の意思に反して食べることをムリやり止められたりすると、その傾向が強くみられます。「私の食べるのジャマしないで。ここから出てってよ!」と怒りだしたり、部屋に鍵をかけてしまったりして親子でけんかになることもしばしばです。

こうと決めたらなかなか変えないガンコさに直面して

高校一年生の娘さん(冴子)が過食嘔吐で困っているお母さんが、カウンセリングを受けにこられました。冴子さんのガンコさについて、これまでのエピソードが語られました。

「娘は幼稚園のころお気に入りの靴でないとダメでした。汚れて洗濯しないといけないからといっても、抱え込んで放さなかったということが何度かありました。なんてガンコな子だろう。なんとか直してやらないときらわれてしまうと、半ばショックを受けながら思いました。

高校生になって過食嘔吐がではじめたころ、また同じような種類のガンコさを娘に感じました。どんなに心配しても『食べる食べない』に関しては、絶対に親の言う事を聞かないガンコさです。『そんなガンコやから、あんたは過食症みたいな病気になってしまったんよ』と、腹立ちまぎれに娘に怒りをぶつけたこともありました」。 

こうと決めたらなかなか変えないガンコさに直面して、お母さんはどうしていいかわからなかったそうです。

ガンコへの理解が、過食嘔吐への理解につながった

そんなお母さんの考え方が変わってきたのは、「ガンコさは娘さんの特性です。これを変えようとせず、活かす生き方を見つけましょう」と、カウンセラーから説明を受けてからでした。はじめのうちは「そんなこと言われても、このガンコさで過食症になったんだからなんとか直してやらないと」と、反発する気持ちがありました。しかしカウンセリングで何度も言われガンコさを活かすアドバイスを受けていくうちに、だんだんとお母さんの意識も変わってきました。

「過食嘔吐は食べているあいだは夢中になれ、いやなことが忘れられる。吐いた後、スッキリとした爽快感を感じることができる」ということも、お母さんはカウンセラーの説明でわかるようになってきました。娘は親の心配や干渉を拒否してでも、「自分のガンコさを出せる領域として過食嘔吐をつらぬいているんだ」ということも理解できるようになってきました。

「ガンコな子はダメ、きらわれるよ! 変えなさい」と娘に言い続けてきたお母さんでしたが、カウンセリングの回数を重ねるうちにだんだんと変わってきました。「ガンコさは娘さんの持って生まれた性格、そう簡単に変えるのはつむかしい。むしろガンコさを活かす生き方を見つけましょう」と、なんどもカウンセラーの言葉を聞いているうちに、「ほんとうにそうだ。そうしたほうが私にとっても娘にとっても、いい方向にいくんじゃないかしら」と、思い始めたお母さんでした。やがてお母さんの頭のなかで冴子さんの過食嘔吐に対する受け止め方が変わってきました。

「ガンコはすばらしい持ち味」、これでいいんやなと思えて

それから3ヶ月たって、久しぶりのカウンセリングがもたれました。お母さんと冴子さんの関係もずいぶんなごんでいました。

「私がガンコさを認めて受け入れるようになったら、娘はだんだん明るくなってきました」とお母さん。冴子さんも「さいきんお母さんが変わってくれて、『私はガンコなままでいいんやな』と思え出せました。「今までやったら『ファッション関係の大学に行きたい』と言ったら、猛反対されてました。このごろお母さんは「ええよ、がんばり。好きなこと思いっきりしたらええんやで」と、賛成してくれるからうれしくて」と冴子さんは笑顔で話ました。

自分のガンコさを肯定できる毎日、行きたい大学に進むことを応援してもらえてるこのごろ。冴子さんの過食嘔吐もだんだんと減ってきているとの報告がお母さんからありました。冴子さんは過食嘔吐の領域で、「ここだけは絶対にゆずれない」と、自分のガンコさを主張していました。今は自分のやりたい事、行きたい大学、進みたい道についてしっかりとガンコさを発揮しようと思っています。

こうした話しを聞いてカウンセラーは、冴子さんの過食嘔吐が完全に治るのもそう遠くないだろうと確信しました。

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