摂食障害(過食症・拒食症)の治療のポイントと「一人で治したい」の落とし穴(由美 摂食障害・過食症)

「親に迷惑かけたくないんです」だから一人で治したい。

なぜ過食症や拒食症になると思いますか?

由美:短気やったり、素直でなかったりするから。だからいらいらして過食してしまうんかなって。弟に『ぶたまん』って言われたことか、友だちにからかわれたことが原因やと思います。それに街歩いてても、太ってる人よりやせてる人のほうがきれいやから。
ダイエット食品買って、私なりに目標きめてやってるのに、ぜんぜん成果があがらないんです。それでイライラして、よけい食べたくなるんかなって。

セラピスト:それはきっかけなんです。それだけではこんなに食べることとやせることに、強烈にしがみつくなんてことはないんです。
斜面を滑り落ちだしている。
この斜面はなんなんだろう?
生きてても充実感がないというか、自分の生きるパターンがつかめてない。
充実した人生を生きたいという意欲はすごい。だけどそれはどうしたらみつかるのか、わからない。
そんなとき「やせてる」ことがこんなに充実感があり、新鮮で、自分が求めてるものがある。何かを求めている気持ちはまちがってないけれど、それがやせるという目標にしか感じられない。それがやせた時に感じられるのと同じような充実感を他のことに感じられるものが見つかったら、少しづつ過食症や拒食症かた脱出していける。

どうしたら脱出できると思いますか?

由美:うーん、わかりません。何をしてもだめだったし。

セラピスト:過食症・拒食症というのは、どっかであなた自信が伸び悩んでる。わりと向上心の強いあなたが、伸びていく方向が見い出せないまま、過食・拒食という方向ににょきっと伸びだした。「こっちの方向はいけませんよ」といってもむり。勝手にどんどん進んでいってしまっている。今そんな感じじゃないですか。
「充実した人生を生きたい」というのは間違ってないのだから、それを伸ばしていったらと。やりがいを食べること、やせることだけに感じないで、他のものにも感じられるように伸ばしていったら。そうすると極端に自己嫌悪に陥らなくてすむし。これが治癒の方向になります。

どんなふうになったら、生き生きできますか?

セラピスト:「そんな欲ださんで、平凡でいったらそれでいいんじゃない」と、親も友人も言うかも知れない。でも由美さんは「人並みな生き方」辛抱できない。そうじゃないですか。燃え上がるような生き方をしたい。どうしたらそれが見つかるか。それをカウンセリングでいっしょに探していくのが、われわれセラピストの役目です。

親に迷惑かけたくない。一人の治療は無理ですか?

由美:両親とも体があんまし丈夫やないから、私のことで心配をかけたくないんです。自分らのことだけ考えてくれてたらいいから。一人の治療は無理ですか?

セラピスト:そうあなたは思っても、もうとっくに親御さんは心配しておられる。もう十分迷惑はかけてる。お母さんにそんなに負担のかからない形で、協力してもらえることはいっぱいあります。その方向であなたもよくなるんやったら、そのほうが現実的です。ちょっとした親の理解とか言葉で、やる気がでてくることがよくあるんですよ。
一見関係のないようなお母さんとの会話や日常の出来事のなかに、工夫する余地があります。砂山のてっぺんに立ってる旗を、いきなりなんとかしようとしても難しい。そのすそ野から砂取りしてると、だんだんてっぺんの旗をとることができる。こんなふうにあなたの日常生活をお母さんと話し合いながら、治療のヒントを見つけていくんです。
どうしたらあなたが元気になるか。いらいらする時はどんなときか。
甘えたら元気になる人もいるし、、けんかしたら元気になる人もいる。おもいっきりしゃべって、聞いてもらえたら、なんかやる気わいてきたゆう人もいる。
それがわかることが、自分を知るということにつながっていきます。

「一人で来たいんですけど」の治療の落とし穴

セラピスト:過食症・拒食症で、一人で治療にきて最後まで通いきって治ったゆう人はめずらしいです。カウンセリングをスターとして2~3カ月たつと、「なんか変化ないな」「行くのきょうはしんどいな」とか「こんなん治るんやろか」「もうやけくそになった」とか。
そんな山にぶちあたった時、一人では挫折しやすい。ちょとした親の理解とか言葉で、やる気がでてくることがよくあります。
過食の人は、途中で嫌気がおそってくる。過食したあとなげやりになって「もうええわ」と。人一倍気づかいの人だけに、一度キャンセルしたら「もういかれへん。悪いから」という気持ちに陥りやすい。お母さんと来ていたら、その時は本人これなくても、親へのアドバイスを集中的に話したりとか、それなりに有意義なカウンセリングが持てる。今までの努力が次へつながるというのが、治療の成功につながる。
過食症・拒食症の人は感情の波があって、一人だけの来所面接は途中で切れやすい。そう思いませんか。

由美:なるほど、よくわかります。たしかに私も感情の波がはげしくて、投げやりになることがよくありますから。帰ってお母さんに話してみます。きょうはありがとうございました。

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