成績の下がった私なんて、私じゃない

「お母さん、いっしょに死んで。もうこれ以上生きていけない。食べるのを止めることもできないし、吐くのもうまく吐けない。先月から3kgも増えたのよ。大好きなGAPのブラウスもピチピチで、ジーパンも入らないし。もう最悪。生きてく希望もない。どうしたらいいの、どうしたら」。

たびたびパニックをおこして真理は母親にすがりつく。どうしていいかわからず途方にくれて母親と真理はセンターに来所した。「私はやせさえしたら、だいじょうぶ。なんでもできるようになる」と、真理は言う。追いつめられた真理の気もちのどこに抜け道があるのか、セラピストはていねいに聞いていった。

セラピスト:学校へは行ってるの?

真理:はい、なんとか。遅刻が多いんですけど。でもみんなが私のこときらってるみたいに思えて。

セラピスト:どんなところでそう思うの?

真理:机のうえにもたれて寝てたら「顔のお肉がはみでてるよ」ってからかうの。手帳にも「子豚ちゃん」って落書きするし。

セラピスト:それはひどいね。そえでやせさえしたらって思うのね?

真理:はい。ストレスがたまって勉強に集中できないんです。成績が下がった私なんて自分じゃない。学校には行きたいけど行きたくない。どうしたらいいかわからないの。

母親:成績のことは気にしないでって、言ってるんですけど。

真理:お母さんはだまってて!なんもわからないくせに。

セラピスト:過食症はね、いままでの自分が変わる時期なんです。前の自分から変わってより大人になっていかないといけない時期。大事な変化をせまっているとも言えるんです。そんなふうに感じませんか?

真理:なんかが行き詰まってると思うけど、でも・・・

セラピスト:「できたら今まで自分の築いてきたやり方で通したい。これでいままで私はやってきたんだから」と、思っているんでしょう。でもそれは無理な時がきてる。大きなローラーにむかって突っ走るようなものなんです。バリバリってつぶれてしまう。だから別の道をさがさないといけない。こんな状態に追いつめられてるんですよ、と教えてくれてるのが過食症だと。

真理:勉強、どうしたら前のようにできるようになるんでしょうか?食べることばかりに追われて。

セラピスト:今勉強に身が入らない自分がきらいで、食べることを止められない自分がきらいで。自己嫌悪のかたまりみたいになっていませんか。自分のやり方、考え方をどう変えていったらいいのか。これをまず見つけることですね。カウンセリングでじっくり時間をかければみつかります。この関門をくぐりぬけたら、「あれ、このやり方もいいじゃないの。いままでのやり方もよかったけど、この方がこれからの自分にあってる」と、思えるようになるはずです。そこに真理さんの人間としての成長があります。ここで停滞してしまったら、成長という自分では止めることができない変化に苦しみ続けることになるんですよ。

真理:(うなずきながら)なんかわかるような気がします。

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