高校やめるゆうんですわ。どないしましょ。

「単位制の高校へ代わるゆうんです。あと一週間行けば進級できるのに」と、真美(高一)のお母さんがかけ込んでこられました。長く不登校ケースとしてみていたのですが、昨年の秋ぶじ再登校にこぎつけたケースです。あれ以来多少の波風はたちましたが、なんとか登校が続いておりもう安心とご両親もほっとされた矢先のことでした。

聞くとクラスにどうやらからかい半分いじめ半分の子がいるらしい。それがまたよりによって同じグループの子だというのです。「太めちゃん」と真美のことを呼んだり、「ほっぺがおちそう」と笑い転げたり。進級すればクラスも代わる可能性もあるのですが、おなじグループなのでやはりそのままおつきあいは続きます。

「そうですか、そんなつらい思いをされてるんですか」と、担当セラピストは言いました。「それで、お母さんはなんと?」「はい、いじめというよりはからかってるという感じですので、『言い返してやったらえんや』とか『無視して知らん顔してたらおさまるやろ』とか言ってます」「で、それが原因で転校すると言われてるんですか」「私が心配してるんは、学校やめて単位制の高校へ行くゆうてることなんです。それは逃げなんやないかと。いやなことがあるから、逃げて解決するゆうことなんやないかと。転校するにせよ、逃げるという形でなく本当に自分にあった高校やからという意味なら反対はしません。「単位制は授業だけ受けたらいい」とか「好きな科目だけとれるから」とかゆうてますので、きっと甘く考えてるんやと思います」。いちど真美さんの不登校で悩まれ、長く来所されていただけあって、お母さんの着眼点はさすが鋭くなってきています。この事態をどう切り抜けるか大事な時がやってきました。そこでセラピストは、つぎの三段階にわけたアドバイスをだしました。

アドバイス第一段階:「いじめ、からかい」についていまの対応をやめてください。

「言い返してやったら」とか「無視したら」とか、言うのは百害あって一利なしですから。それよりしっかりと聞き役を。「そうか、つらいな」「からかわれるっていややな」「そいで学校やめたいんやな」と、受け止める対応で。真美さんのお母さんへの信頼感をかためることです。だいぶ良くなっておられましたので、さらに固めることです。これがこれからの動きの土台になりますので。

アドバイス第二段階:両親の協力体制をつくる

お父さんとの足並みを揃えて下さい。お父さんは「しゃないやないか。単位制でも高校卒業と同じなんやから。そいでもええんとちがうか」という意見です。お母さんも同じならいいんでしょうが、お母さんは「なんとしても進級して今の高校を」と強い気もちがあります。この不協和音では真美さんを最終的に動かすことはできないでしょう。お二人でよーく話し合って、ご意見を一致させてください。

アドバイス第三段階:転校は「逃げ」をはっきりさせる

「単位制高校を反対しているのではない」ことを伝えましょう。いじめられたから、いやだから、「やめて」と言えないから、転校する。単位制はイヤなら授業だけ受けて帰れるから。こういった理由で転校することが本当に真美さんのためになるかどうか。同じグループの子なら、やんわりと「いやだからやめてね」と言えるようになるのも必要でしょう。せっかく頑張って不登校を乗りこえられたのだから、今度はいじめを乗り越えて。今はやんわりと「ノー」が言える力をつける時だと。今ここで言えないのなら、どこへ代わってもまた同じ状況になったときに、ノーが言えないでしょう。あとわずか一週間で出席日数が足りて、試験がうけられたら後は休みに突入。進級ができるのです。今ここで「転校するからもう学校に行かない」という短絡的な考えが「逃げ」であることを、いかに両親が話して真美さんを納得させることができるかどうか。ここで第二段階で得た両親の協力体制が力を発揮します。

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