頑張るお母さんは疲れが心配(美香29才 摂食障害・過食症とひきこもり)

過食症でひきこもりになった娘さんのご両親が、この春からカウンセリングに来所されている。いつも二人でそろってこられ、待合い室でも仲よさそうに話をされている。29才になる次女の美香さんが、二年前から過食症に、その半年後にはひきこもりになってしまわれた。

熱心なお母さんと、にこにこ余裕のお父さん

「先生、やってきました。先週出していただいた課題を。ごらんください」と、お母さんはドサッとこなしてきた課題の資料を机の上におかれた。「うわー、これは大変でしたね。しかしここまでやっていただけるとは」と、セラピストも感心する。もちろんお父さんも一緒に取り組んでいただいたと思ったが、お父さんはこう言われた。「家内がぜんぶしてくれましたんです。ほんまにようやってくれますわ」と、ニコニコと余裕の笑顔である。そんなお父さんをみてお母さんも満足そうにほほえんでおられる。

カウンセリングをスタートして三ヶ月になる。そのときの相談内容にあった課題をお出しするのだが、毎回このような感じで報告がある。仲がいいのはいいが、これではお母さんが疲れてしまわれないだろうか。セラピストはだんだん心配になってきた。「お母さんお一人の頑張りでは、息切れが心配です。お父さんと協力して取り組んでいただいたほうが安心ですが」と話した。「だいじょうぶです。主人は仕事がありますから。家のことは私が頑張るというのがうちの方針なんで、なれてます」と、お母さんは言われた。

「もうこれ以上頑張れません」とお手上げ宣言が

「こんにちわ。それでははじめましょうか」と、ある日の面接でふとお母さんをみると、かなりお疲れの表情をしておられた。お母さんから「もうこれ以上頑張れません」と、お手上げ宣言が。「やっぱりそうか。いつかこういう日がくるのでは」と思っていたが。「そうでしょう。子どもさんのことは気の休まる時がないだけに、大変です。やはりお母さんにも休養が必要なんですよ。そんなお時間はもてませんか?」

「休養といわれても、私、いままで意識して休んだことがないので」と、お母さんは困った顔をされました。しかし気持ちの切り替えとか息抜きは長丁場のカウンセリング治療では必要である。

お父さんと話し合って、息抜きの工夫を

そばに座っておられるお父さんに話しかけた。「お父さん、お母さんが息抜きをされる工夫を、お二人で話し合っていただけませんか。たまには旅行とか、映画をみるとか」。それから10分ほどお二人はあれやこれや話し合って、なにか合意点をみたようだった。

「昼寝したらどうかってゆうてますねん」と、にこにこしながらお父さんが言われた。「は、昼寝ですか?」と、セラピストはもっとなにか別の工夫を期待していたので拍子抜けがしたような返事をした。しかしお母さんがそばから「私、外に出るというのもよけいストレスがかかってしまうんです。それで主人の提案してくれた昼寝が一番手軽でいいかなと思います」と、賛成の答えが返ってきた。「なるほど、お母さんが一番休まることがいいですね。それじゃこれからお昼寝を取り入れてみてください」と、セラピストは言った。

お母さんは明くる日から、昼寝をされるようになった。しかしすぐに用事を思い出し動いてしまって寝付きにくいようだったが、だんだん昼寝が楽しみになってこられたようだ。「まだまだ頑張れますよ」と、お母さんが言われるそばで、お父さんはにこにこしながら聞いておられた。

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