過敏性腸症候群を、カウンセリングで完治したケースの紹介(瑛子40才)

過敏性腸症候群でカウンセリングに来所していた瑛子さん(40才,銀行員)の話をしましょう。瑛子さんはかなり厳しい症状が続いており、毎朝の通勤にたいへん困っていました。カウンセリング治療を何回か重ねて、約半年で完治していったケースの紹介です。

「毎朝が格闘です」と、つらい体験を話す瑛子さん

「朝の通勤電車で、急激なさしこみが突然やってくるんです。乗ってるのは15分ほどなんですが」と前置きをして、瑛子さんは電車のなかでの様子を書いた紙を見せてくれました。

「電車が甲子園口駅を発車してしばらくは平穏状態が続く。『あー、今日はだいじょうぶかな』とホッと一息つく。『そろそろ本でも読むか』と思ったとたん、下腹にグーッとさし込みが。『ウワー、きたきた、きたぞー!』と、体中に緊張感が走る。頭のなかをよぎるのは「次の駅までもつか」だ。このさし込みは「待ったなし」で襲ってくるのでやっかいだ。深呼吸をしたり、窓の景色をながめたり、気をそらそうと必死になる。下腹の痛みは徐々に激しさをまし、額には脂汗がじわっとにじむようなつらさ。便意をこらえるのに必死でなにも耳に入らない。「次の駅は尼崎だ。えーと前から5両目あたりの階段の上にトイレがあったな」と、頭のなかでイメージを描く。そして着くやいなやドアから飛び出して一目散に階段を駆け上がりトイレへ突進。あーあ、今日も糞便との格闘で一日が始まったか。ヤレヤレ、えらい人生やなー!」

あまりにもリアルな文面にカウンセラーは思わず「これでは毎朝たいへんでしょう」と、声をかけました。

こんなつらさから解放される日がくるのでしょうか?

瑛子さんの過敏性腸症候群はかなりつらい苦しいものでした。仕事への意欲もそがれて止めたくなっているのではと問いかけると、意外な答えが返ってきました。「仕事がいやなら朝の通勤電車でこうなるっていうのもわかるんですが、私、仕事が楽しくてしかたがないんです。それなのになんでこんなことになるのか」と。

カウンセラーは瑛子さんが「仕事ストレスからの過敏性腸症候群」ではないと考え、治療方針を慎重に練るることにしました。いろんな角度から質問をくり返し、瑛子さんは以前から腸関係のトラブルによく悩まされてきたことを確認しました。食事をした後とか試験で緊張するとかすると、すぐトイレに行きたくなったりしたそうです。そのために修学旅行や運動会など集団で動くいろんな行事などでは、いつもしんどい思いをしていたということです。

念のため「仕事での会議なんかは大丈夫ですか?」「緊張する来客の対応では?」といった質問を再度した後、瑛子さんの下腹部のさし込みは、朝の通勤に限られていることがわかりました。「職場でのストレスから通勤電車でのつらさがやってきているのでない」という確認ができたので、カウンセラーは瑛子さんにあった治療方針をたてることにしました。

乗車駅から下車駅までをイメージで一緒に歩いてみましょう

乗車駅の甲子園口から出発して次の立花駅はまず大丈夫。どうやら尼崎駅あたりからあやしくなってくることが多いということで、尼崎の駅で降りることにしました。階段は前と後ろの二つ。どっちの階段からおりたらトイレに近いか、それも調べてもらい正確な地図を描きました。女子トイレの数はいくつあるか。洋式はどの扉か、までもチェックしてもらって。瑛子さんとカウンセラーの「トイレ談義」がはずみます。

「さあ、降車駅につくまで一駅ごとに降りなければいけないとイメージしてくださいね。全ての駅でトイレに駆け込みますよ。次は尼崎駅です。どうします、トイレの位置はわかっていますか?あなたの車両は階段に近いですか?近い車両まで移動できますか?」といった質問を投げかけながら、イメージのなかで出勤します。実際にカウンセリングの最中に、瑛子さんがトイレに行きたくなるという事態が起きたこともあります。

こうしたトレーニングを約3ヶ月積み重ねていきました。その間朝の通勤電車での様子を報告してもらいながら、プログラムに軌道修正を加えていきます。ふた月ほどたったころ「先生、今朝は意外にも大丈夫でした。降りてから行きましたけど」「いやいや、まだ油断はできませんよ。あれは突然やってきますからね。ゾンビみたいなもんです」といった笑いのまじった会話も交わされ出しました。

やがてカウンセラーと一緒のイメージ通勤を、いつの間にか瑛子さんは楽しみながらやっている自分に気づきました。「このごろ一駅ごとに車両内を移動してるんです。階段に近いドアまで」「それは安心ですね。でも面倒ではないですか?」「そんな面倒なんて思いません。安心できる気持ちのほうがずーと大切ですから」と、

瑛子さんは意欲的です。瑛子さんの会社の出勤時刻は10時だったので、電車内はそれほど混んでなかったことが幸いしたようです。

こんな毎朝をくり返しているうちに半年ほどたった頃、瑛子さんは朝の通勤電車での過敏性腸症候群からはすっかり解放されていました。

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