家族システム論2

これはどういうことでしょうか。技術はあるんです、見る目もあるんです。しかし、自分の息子に出会ったときにはまったく無力になるる恐ろしいことですね。これは、その人がその場に影響されていると言えます。どこの場にいるかということで、その人の力の出方が変わるわけです。

会社という場では非常に有能に動ける人が、家族という場戻りますと急に力がなえてしまう。いたずらに怒っても、それは効果を生むのではなくて、むしろ子どもを閉じこもらせてしまいます。会社ではじっくり聴くことが相手の心を開かせるのに、子どもの場合には反発を招いてしまう。これにはお父さんがびっくりしてしまいます。長いあいだ自分が家庭という場にあまり居る機会がなくて、子どもと対応する経験が少ないお父さんにとっては、特に大ショックです。「よし、まかせなさい。もうお母さんではダメだから自分がやろう」と、パッときてみたら、とたんに自分の力がゼロになっている。こういうことが実際に起こります。

この場合は何によって影響されているかというと、やはり家族全員のつき合い方ということができます。家族の関わり方によってこういう現象が起こるのです。これは必ずしも家族にだけ見られることではありません。

たとえば、弱いおとなしいという人が一人おられます。一人ではおとなしいんです。二人でもおとなしい。三人でもおとなしい、四人でもおとなしい、五人でもおとなしい。しかし、十人になるとかなり恐い顔をして相当のことをやるということもあります。これは先ほどの家族と同じで一人一人の性格を足していったところで生まれることじゃないんです。「群集心理」という言葉のように、同じ性格でも十人集まれば全体としての性格は変わるかもしれません。そういうものを家族とか集団というものは持っています。これが家族療法の難しいところです。従来の考え方からするとお父さんが悪い、お母さんが悪い、子どもがやっぱり親のいうことをきかないから悪い、という風に言われていました。こういう風に母親が父親が兄弟がとか、あるいはおじいちゃんがとか、ある特定の個人に問題があるとされていましたが、そうではなく、これは全部一人一人の行動がその場の力というのにずいぶん大きな影響を受けていることから起こるのです。

ある面接場面を切り出してみましょう。お父さんが、がむしゃらに娘に対して非難している。学校をどうするかという話を私がしたら、娘さんは「行きたい気もちはあるけど、どうせ私いかれへんし、そんなん言ったって・・」と、グズグズしている。するとお父さんが、「そんなこと言ってるからあかんのや。ああやない、こうやないとか、そんなことでどうするんや!」と、一方的にパッパーっと言う。この二人のやりとりを見ていますと、明らかにうまくいっていません。機能不全を起こしているわけです。しかし、お父さんが同じことを外でやったらうまくいくんです。会社ではそれでバリバリ成功しておられるそうです。だから、これだけ見てお父さんのやり方が悪いというわけにはいかないんです。

同じことを言って外では成功するが、なぜ家の中では成功しないか、ということを考えることが大事なんです。そういうことを見てみますと、家族という生き物はそれ全体が一つの独特の個性というか、顔を持っています。この全体としての性質をとらえない限り、家族を面接してうまくいくということはどうも難しそうだということがわかってきました。

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