家族ぐるみの治療をめざして2

まずは、子どもに向かって「君ね、このあいだ言ってたけど、あれはすごく大事なことのようやな。お父さんに言いたい気もちあったな。あれ、ここでちょっと話してみないか」と水を向けます。私の希望としては、ここで勇気をだして普段言えなかったことを言ってほしい。これだけ大きなトラブル、入院というような事態になったんだから、やっぱりそれぐらいの勇気をもってほしいという気もちなんです。実際に子どもは勇気を持ち始めていました。だからこそ普段あまり誰にも語らなかったことを、治療者の私に話すというようなことができてきたわけです。

ところが、いざお父さんの前へ行きますと、子どもの態度がガラッと変わるんです。私と話している時は、割と素直に話してくれてたのですが、いざお父さんに向かうと急に緊張して黙りこくってしまったり、あるいは急に挑戦的なポーズをとったり、態度がガラッと変わるんです。「あれっ」とびっくりしました。しかし、ここで負けてはいけないと思い、人生の一大事ここで一勝負してみろという感じで「君、ここで言わんかったり一生お父さんにわかってもらえないぞ」と、子どもを少しプッシュしました。そうすると、グズグズはするものの、子どもは一大決心をしたかのように思い切ってお父さんにこう言いました。「お父ちゃん、あんなー、前から言おうと思とったんやけどな、こんなんわかってたか・・」・・、お父さんに自分の気もちをポツポツとしゃべり始め、終わったかと思うとワーッと泣き出しました。「やったー、これはすばらしいドラマだ!」、私はすっかり陶酔してしまいました。「これをきっかけにきっとこの家族はうまくいくに違いない」と思っておりますと、今度はお父さんの方がぽかーんとした表情で「先生、まだ息子の病気、悪いようですね。なんとかなりませんか」と言われ、ガックリきてしまいました。「これは難しい。家族というものは難しいなー」と思い始めたのが、家族ぐるみの治療をめざすきっかけになったんです。

関連記事

2015.02.07

大学生の就職活動と対人恐怖症(対人緊張)

大学二年生や三年生の親御さんからの相談が増えています。就職活動に不安を持っておられるからです。特に子どもさんに対人恐怖症がある場合、就職活動の面接やグループディスカッションの時に緊張してうまくいかないのではないかと、不安 […]

2010.04.28

心身症の心理療法

淀屋橋心理療法センターは27年前からカウンセリングの技術が十分でなかった多くの分野で新しい心理療法を開発してきました。不登校や摂食障害、対人恐怖症(対人緊張)、ひきこもり、うつ、リストカット等です。今までの当センターの活 […]

2001.10.02

「淀屋橋心理療法センター」と「コンピューター」

みなさんは当センターのホームページが最近かなりの頻度で更新されていることにお気づきですか。だいたい二日に一回ぐらいのペースです。ここまでくるのに大変なエネルギーと工夫を要しました。当センターのコンピューターはMacint […]

シリーズ記事

1.家族ぐるみの治療をめざして1

淀屋橋心理療法センター所長の福田です。まずは、私がどうして「家族」ということに興味をもち始めたかというお話からさせていただきます。 今から18年ほど前、私は大阪のある総合病院の精神科に勤めておりました。そこには思春期の子 […]

2.家族ぐるみの治療をめざして2

まずは、子どもに向かって「君ね、このあいだ言ってたけど、あれはすごく大事なことのようやな。お父さんに言いたい気もちあったな。あれ、ここでちょっと話してみないか」と水を向けます。私の希望としては、ここで勇気をだして普段言え […]

3.家族システム論1

家族療法家は症状を背負った子どもをみる場合、家族が問題らしいということ、奇妙なこと、興味深いこと、その他非常に大事なこと等さまざま気がついていました。しかし、残念ながら家族療法家は長い間認められるということがなかったので […]

4.家族システム論2

これはどういうことでしょうか。技術はあるんです、見る目もあるんです。しかし、自分の息子に出会ったときにはまったく無力になるる恐ろしいことですね。これは、その人がその場に影響されていると言えます。どこの場にいるかということ […]

5.「家族」をあつかう難しさ1

他にもいろんな症例があります。たとえば42才の強迫神経症の男性ですが、これまで一度も職についたことがなく、自分の手がきれいか汚いか、ただそれだけを考えてきたような人です。20才過ぎから現在まで朝起きたときから顔を洗うまで […]

6.「家族」をあつかう難しさ2

そのころ私は、いろんな人が勇気をもって語り合えば、ずいぶん人生が開けてくるという考えをもっておりましたので、お父さんがこられたとき次のように言いました。「よく来て下さいました。息子さんはお父さんに対して複雑な気持ちをもっ […]

コラム一覧へ