家族ぐるみの治療をめざして1

淀屋橋心理療法センター所長の福田です。まずは、私がどうして「家族」ということに興味をもち始めたかというお話からさせていただきます。

今から18年ほど前、私は大阪のある総合病院の精神科に勤めておりました。そこには思春期の子どもたちがたくさん入院していました。精神病というほどのことではないのですが、自殺未遂があったり、家出を繰り返したり、シンナー中毒であったり、かなり深刻な状態の人たちが相談に来られていました。そして、生命の危険があるからということで入院するわけですが、子どもたちにしてみれば最初入ってきたときはショックですね。それからしばらくして、だんだん立ち直ってくると、たとえば、中庭に出ているときに「今日はいい天気ですね」なんて、ポツリと言うようになるんです。そんな何気ない言葉がきっかけになって少しずつ心を開いていくということがあります。こちらも気をつかって、あまり当たりさわりのない話題、たとえば、「あそこに公衆電話があるけど、あそこで電話をかけているのは誰かなー」とか、いろんなきっかけをなんとかつかもうと思って話しかけます。

そういう風につきあっていますと、その子どもたちはちょっとしたことがある度に私の元にやってきます。だんだんと心を開いてきて話し合えるようになってくると、必ず出てくるのが家族の話なんです。最初に話し出すのは「友だちとうまくいかなかった」とか、「自分の性格がイヤなんだ」とか家族以外の話が多いのですが、最終的に重い口を開いて非常に大事そうにしゃべりだすのは家族のことが多いんです。「僕の気もちは○○なんだけど、お父さんはわかってくれないんだ」とか、「お母さんがすごくうるさいんだ。でもどんなに言ってもダメなんだ」とか、そういうようなことを語り始めます。あるいは、兄弟がどうだとか、その語っている様子は、口唇をふるわせたり涙を流したりしています。そんな子どものみていると、家族とのふれあいがこの子にとってはどんなにか辛い経験なんだという印象を受けます。「どうしてそういう辛い気もちを親に言うチャンスがなかったんだろう」と思うと、その子がかわいそうになってきます。さらに話を続けていくうちに、私がお手伝いしたら何とかなるかもしれないという気もちが湧いてきました。そこで、思い切って両親に来ていただくことにしました。お父さんが「夜遅くしか来れない」と言われ、外来に電気をつけて待っていると、11時ごろになって家族全員が来られました。そして、みんなで心の問題について話し合ってみようという場を設定しました。

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