4話:えらいな―「どんなとき過食したくなるのかわかるって、えらいなー」

過食症になって3年目の百合は高校三年生。受験の年に突入した緊張感からか、それともなかなか治らない過食症のせいか、最近イライラしているときが多く過食もふえがちです。心配顔のお母さんと、ぶすっとすねたような百合さんが二人ならんで待合い室に座っていました。

どんな時、過食したくなりますか?

百合は学校から帰ると「もう今日は我慢できひん。過食してやる!」と大声でさわいで、冷蔵庫に突進。中の食べ物を取り出しては口へ取り出しては口へ。動けなくなるくらい食べて吐いて、「ああースッとした」と思えるのはほんの一時だけ。すぐに「あーあ、また食べてしもた。私はアホや、アカンやつや。生きてる値打ちなーい」と泣いて自己嫌悪にさいなまされています。(文中セラは、過食症セラピスト)

セラ:食べるの止めようと思っても止まらないでしょう。それよりどんな時過食したくなるか、わかりますか?

百合: うーん、どんなときかな・・・。

セラ:『なんかわからないけど食べたい』じゃなくて、『こういう時に、食べたくなる』ていうことが自覚できればねー、どうかな。

百合:うーん、ええっと、あのね、学校でニコニコ笑いすぎたときやろか。それとね、友だちから自分がさそわれたとき。「日曜日、コスプレいかへん?」とか「映画みにいこうよ」ってさそわれた時とかにね、ほんまは行きたくないのに「うん、ええよ。私も行きたかったんや」と言ってしまったときとか。

セラ:ニコニコ良い子しすぎ、それとほんとうの気持ちを抑えて合わせたときですか。なかなかいい気づきですね。

百合:言ってしもてから、あとでゆううつになってくるんです。そんなに簡単に相手の喜びそうなこと言ってしまった自分に腹がたって。そんなときむしょうに過食したくなります。

セラ:そうですか、あとになってゆううつにね。えらいなー、百合ちゃんは。どんな時、過食したくなるかわかってるんやね。これはスゴイことですよ。

百合は先生から「スゴイ」とほめられて、ずいぶん気が楽になったようです。お母さんも過食の理由がわかって、ひとまずホッとしました。過食はすぐに止められなくても「私は、こんなとき食べたくなるんや」と原因が自覚できていれば、必要以上に自己嫌悪におちいることがなくなります。

過食はとめられなくても「こんな時食べたくなる」という因果関係が自分でわかれば、まえもって予測することができるようになります。この体験が積み重ねられたら、過食をしても自己嫌悪におちいったりしなくてみます。

(2008.01.23)

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