3.過食症に苦しむあなたの叫びと脱出へのアドバイス

「吐けない、太ってしまう、太る恐怖をなんとかして!」

「食べた後、なかなか吐けなくて。時間がかかるから必死なの。苦しくて指をのどに突っ込んで、やっと吐けた。やれやれ」。でもね、体重計にのったらいつも100g増えてるの。あーあ」。

この瞬間から幸代のパニックがはじまる。「今でも太ってるのに、これ以上太りたくない。お母さん、なんとかして」と、母親に泣いて訴える。「だいじょうぶよ、ちっとも太ってるふうには見えないから」と、なだめてもダメ。太る恐怖感はだんだんエスカレートして、幸代は手当たりしだいに物を投げ出す。止めようとする母親にも殴りかかる。「太る恐怖」に追いつめられた幸代は、母親と毎日のようにこんな修羅場を演じている。まるで地獄である。

「どうすればこの太る恐怖から解放されるの?教えて、教えて、教えてよー!」

いままで過食に悩む人たちは、いろんな専門機関を訪れてはこの質問をなげかけてきた。ある医院では「そんなに太ってませんよ。気になるのなら食べるのをやめればいいんです」と言われたこともある。「それじゃ薬をだしましょう」と、安定剤が処方されたりもする。安定剤を飲み続けても、決して太る恐怖から解放されはしないのだが。「あなたのわがままです。止める意思があるなら止められるでしょう」と、突き放された言い方に落ち込んでしまった人もいる。「過食症は脳の病気だから治りません」と、言い切った大学教授の先生もおられる。みんな当センターを訪れたクライアントの口からでたことばである。

「過食で食べる回数はどうすれば減らせるの?」

どうすれば過食嘔吐の回数を減らしていくことができるか。当センターの治療では次のような時に成功しやすいとわかってきた。

  1. 両親の協力をどれだけ得られるか。家庭環境の見直しが必要である。
  2. 本人の心のなかに食以外のことで隠されている暗い気持ち…怒り、悲しみ、モヤモヤはなにか。それをあなた自身が自覚し、言葉で表現できるようになること。
  3. 夢中になれるものがあること。また将来への夢がつかめていること。

言いたいことをきちんと言葉で伝える力を高めよう

とりあえず「食べる食べない」の問題はしばらく棚上げして、こうした家族関係や本人の心をみていくことに焦点をあてる。「私、ほんとうはお父さんにこれが言いたかったんだ」とか「『お母さんのバカッ』って大声で言えて、はじめてすっきりした」。こんな言葉が本人の口から聞けだしたら、最初は言葉が悪くてもだんだんと本人のコミュニケーション能力が高まり相手にきちんと伝えることができるようになっていく。これが糸口になって摂食障害の状態は改善の方向に進んでいくと言えよう。

太る恐怖から脱出するには

「太る恐怖はどうなるの?これを取り除きたいんだけど」と、あなたは言うだろう。太ることばかりに気を取られていても、決して太る恐怖からは解放されない。ふしぎなことに治療の焦点を太る恐怖からはずして、もっと視野を広げた問題をみていき関心の幅を広げていくなかで、しだいに太る恐怖は影をうすくしていくことがよくある。もちろん時間はかかる。しかしゆっくりではあっても、確実に過食症のあり地獄から這いあがっていく自分を感じることができるであろう。

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