3.スマートできれいな女優さんにあこがれ、ダイエットから食べるのが止まらなくなってしまった勝代さん(18才 高三)

雑誌やテレビのダイエット特集、若い女性に人気があります。ある週刊誌をみていた勝代さんは「いいな、私もやせたいな。ここに紹介してあるダイエットやってみようかな」とつぶやきました。

「ポテチのカロリー(kcal)って意外に高いのね」

週刊誌にはきれいでスマートな女優さんの写真がのっています。その横には食べ物のカロリーを示した一覧表が。勝代さんのよく食べるポテチは90gで501kcal、ハンバーガーは340kcalとあります。「うわー、こんなにカロリーあるなんて!知らなかった。私、太るはずやね」と、勝代さんはびっくりしました。でもつぎの記事には「このダイエットを実行した人は、半年で10kgやせたよ!」とあります。「10kgですって!それってまじ?でもやってやれないことはないな」。勝代さんの目にはスマートな女優さんの写真がちらついてはなれませんでした。

こってりした物が大好きな勝代さんは、158cmで60kgあります。どうみてもぽっちゃりタイブ。「勝代、かわいいよ。やせた勝代より今のほうが似合ってるよ」というクラスの友達の声で、「まいいか。これでも」と思ってきました。でも「やっぱりやせたいな。50kgになれたらな」という気持ちはずーと以前から心の底にありました。それだけに週刊誌に書いてある10kgやせたという魅力的な数字が頭からはなれませんでした。

ダイエットを始めたけれど、かなり強行スケジュール

勝代さんは自分で食事の献立をたて始めました。そばにはカロリーを書いた一覧表をおいています。「朝はパンと紅茶だけ、昼は学食でおうどんだけにしとこうかな」。「我慢できるかな、こんなんで。でもねー、あの女優さんみたいにスマートになりたいのよね。よし、がんばるぞ!」

夜は家族といっしょのメニューですが、ご飯は半分しか食べないと決めました。あっさりしたおかずしか手をつけません。「あら、勝っちゃんダイエット?ちゃんと食べないとね、受験生なんだから」「ほっといてよ、お母さんのこってり料理で私こんなに太っちゃったのよ」と勝代も負けずに言い返します。「いつまで続くかしらね」といった軽い気持ちで、お母さんは勝代のダイエットを見守っていました。

こんどは食べて食べてむちゃ食いしだした勝代さん

それから一月後のことです。「たいへんです。娘がダイエットから、こんどは食べて食べてむちゃ食いしだしました。どうしたらいいでしょうか?」と、お母さんから緊急の相談電話が当センターにかかってきました。無理なダイエットから過食症に落ち入るケースは少なくありません。すぐに対応のアドバイスをだすために来所してもらいました。

お母さんは顔をひきつらせて飛び込んでこられました。カウンセリングを待つあいだも心配でたまらないのか、「ハッー」というため息が聞こえてきます。手を組んだりほどいたり、心のなかの動揺が伝わってきました。

「お母さん、食べるの止めてよ、太ってしまう!」

カウンセラーはお母さんから家での様子を話してもらいました。

いっぱい食べだしたときに勝代さんは「太るのはいや、怖い。やせたいのに」と泣いて訴えたそうです。でもお母さんはどうしていいかわかりません。「こんな太った体、見られるのいや!学校行きたくない。私なんでこんなになってしまったの。なんも悪いことしてないのに」と、勝代さんは泣き続けていました。

「やっぱリダイエットなんて、ムリだったのよ。1キロや2キロやせたって、反動で食べちゃうのよね。心配しないで。お母さんが摂食障害の専門外来のあるところをみつけたから」と、お母さんは勝代さんを落ち着かせようと一生懸命です。「お母さん、なんとか食べるの止めてよ、太ってしまう!」と勝代さんはわめき続けていたということです。

家に食事以外の食べ物を置かないように

カウンセラーはお母さんに、とりあえずの対処法をつたえました。

カウ:家に食べる物はおいてありますか?食事の材料以外でも。プリンやお漫頭とかの類ですが。

母親:はい、アイスクリームや甘いものが大好きで買ってくれと騒ぎますので、いつも買いおきしてあります。

カウ:まずそれを控えてください。食べ物を食事意外あまり家におかないようにしましょう。これは緊急対応ですので、これで食欲がおさまるというわけにはいかないかもしれませんが。できるだけ早く勝代さんとごいっしょにおいでください。

母親:わかりました。娘を説得して連れてまいります。よろしくお願いします。

カウンセラーの具体的なアドバイスに信頼感を得て、お母さんはホッとした気持ちで家に急ぎました。

カウンセリングを受けることを納得した勝代さん

お母さんは淀屋橋心理療法センターから帰ると、すぐに勝代さんを説得にかかりました。「ダイエットから摂食障害になる人が多いって、教えてもらったの。摂食障害にはね、食べて食べてとまらなくなる過食症と、太る恐怖から食べられなくなる拒食症があるんですって」。「じゃ私は過食症のほうやね」「まだそうとはいいきれないけどね、早く専門家の先生に相談したほうがいいみたい。しろうと判断はまちがった方向にいく恐れがありますって言われてたわ」。

勝代さんは薬を飲むということに抵抗感がありました。お母さんは「そこは薬ではなくカウンセリングで治すところなのよ。摂食障害専門外来があるし、よく話をきいてくださるから行ってみない?」と、すすめました。勝代さんは食欲を自分ではどうすることもできず、お母さんと一緒なら行くことを受け入れました。こうして勝代さんのカウンセリングがスタートしました。

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