2.こだわる:過食の食材にこだわってしまう。トマトの10グラムにこだわって母親とけんか(愛美 17才 過食症歴1年)

トマトの10グラムにこだわって、母親とけんか腰に

過食症の人は、過食の食材にこだわる人が多くいます。食材の種類別ここだわる人、目方にこだわる人、カロリーにこだわる人、その全てにこだわる人とさまざまですが、本人もとてもしんどい思いをしています。次にあげる事例では、過食症の愛美さんがトマトのグラム数にこだわる様子をとりあげました。

愛美:ねー、お母さん、払が冷蔵庫の二段目に入れといたトマト知らない?

母親:ああ、あれね、ちょっとお料理につかったよ。

愛美:えー!?冷蔵庫の二段目は私の食べる物を置く場所って言ったでしょ。

母親:ああ、そうだったね。ごめんごめん、うっかりしてたわ。トマトだったらココにもあるよ、ほら。

愛美:(トマトを計りにのせて計っている)このトマト、260gあるよ。私のはきっちり250gなの。

母親:そんな10gくらい多くってもかまわないでしょ。

愛美:いや-、ダメ。10gって多いんよ。カロリー、オーバーするもん。私はね、一日にとっていいカロリー値は800キロカロリーなんよ。そう決めてるの。

母親:そんな、10gくらい多くったって、カロリー値は差なんてないわよ。そんな神経質にならんでもええでしょ。

愛美:いや、ぜったいにいやよ。あのトマトでなきゃダメなの。返してよ、あのトマトを!

母親:そんなムリよ、もうお料理に使ってしまったんだから。愛美ね、あんたそんなわずかなグラムにこだわって、どれだけ時間をムダにしてると思ってるんよ。約束もすっぽかしたこともあるし。学校に遅刻もたびたびするし。そっちの方がだいじでしょ。

愛美:わかってる。それでもやめられへんのよ。

愛美さんはお母さんとけんか腰の言い合いになったあと、まだ小さめのトマトを選んで計っています。きっちり250gでないと承知できません。あっちのトマトこっちのトマトと計っているうちに時間はどんどんたっていきました。

愛美さんのこだわりにお母さんはあきれかえっていました。しかし愛美さんの過食症という病気を考えると反対ばかりもしておられません。いつも相談にのってもらっている淀屋橋心理療法センターにカウンセリングの予約を入れました。

過食症の人は一日に食べるカロリーを自分で決めていることがよくあります。普通身長160cmくらいの大人で一日平均1600Kカロリーですが、摂食障害の人は「私は500Kカロリー以上はぜったいにとらないぞ」と決めていたりします。だから「トマト一個10gオーバーしたってどうってことないじゃない」というのは、周りの人の意見であって、過食症の本人にとってはとうてい許されない数字なのです。

摂食障害の専門家のアドバイスは?

摂食障害の人の食べ物へのこだわりは、普通では考えられないくらいの強いものがあります。計りも電子計りを買ってきて計りだしたという人もいます。これはすべて「やせ願望、太ることへの恐怖心」からきています。摂食障害の人にとっては「やせていることは、何ものにもかえがたい素晴らしいこと。あの爽快感は誰にもわたせない」という思いにとらわれています.逆に「太ることは、人生最大に醜いこと.生きている値打ちのないこと」くらいに忌み嫌い避けなければならないことと信じています。この熱烈な信仰心にも似たこだわりを理解してあげないと、本人の気持ちはわからないでしょう。

「愛美さんには今はなにを言っても、反対してこられるでしょう。それだけやせへの願望には強烈なものがあります。お母さんはあきれたり怒ったりされるのでなく、冷静に事態をあるがまま受けとめてあげましょう。そして『そうか、トマト10g多くてもだめなんやね。愛実の気持ちわかったよ。今度からお母さん気をつけるから、ごめんね」と、言ってあげましょう」というアドバイスを出しました。

摂食障害にみるこだわりをカウンセリングでは

いつまでも状況を肯定的に受けるだけというわけではありません。カウンセリングが進んでくると愛美さんにも来てもらって、お母さんととことん話し合ってもらうこともあります。お母さんから何を言われても、愛美さんはやり返すようアドバイスします.お互いぜったいに譲らない負けないという気持ちや主義主張をしてもらうこともあります.

こんな体験を通して愛美さんが、「なぜ私はこんなにまでやせることにこだわるんだろうか」ということに気づく可能性があるからです。この気づきが摂食障害の改善に大きく前進するきっかけになることがよくあります。

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