2.「やせた女の子が好き」とボーイフレンドに言われて、ダイエットをはじめた美穂さん(21才 大四)

ボーイフイレンドが「やせた女の子が好き」とわかってダイエットを

美穂さんがダイエットを始めたのは今から1年前でした。そろそろ就職活動も始まり、大学の学生課に足を運んでいたときのこと。夢中で張り紙をみて受ける企業をさがしているとき、同じ系統の会社を探している彼と出あいました。話があい意気投合した感じで、しんどいはずの就職活動も弾みがつき楽しい体験になりました。

ある日いっしょにランチを食べているとき、彼が向かいのテーブルに座った女の人をチラチラと見ています。

「ねえ、あなたやせてる人が好きなの?」
「え、うんそりや女の子はね。やせてるほうがかわいいよな」
「えー、そうなんだ!やせてる子がいいのか」

美穂は彼の一言がやけに気になって…「そういえばあの子、腕も足も細いなー。ウエストだってしまってるし。それに比べてわたしはねー、ダメだな。よーし、私もダイエットしてやせよう。あの人よりスマートになってみせるぞ!」そう決心した美穂さんの目は輝いていました。

1キロやせ、2キロやせ…やせる喜びにはまりだした美穂さん

それから美穂さんのダイエットがはじまりました。油物や肉類などカロリーの高い食材は極力さけます。ご飯もお茶碗一杯以上は食べないと決めました。

朝はサラダとお味噌汁。「ご飯たべないの?」というお母さんの声がうっとおしく聞こえます。以前から食事に関してはけっこう口やかましいお母さんでした。ランチは自分でつくった小さなおにぎり2個。「ウワーッ美穂の弁当箱、小さいねー。そんだけで足りるの!」という友人の声も無視して、美穂さんの「ダイエットしてやせるんだ」という決心はゆるぎませんでした。

1キロやせた。2キロやせた。だんだんスマートになっていく自分の体を鏡に映して、美穂さんは内心うれしくてたまりません。今までの自分と違った自分に生まれ変わっていくような気がします。どこからかそんな自分に自信もわいてきました。やせていく美穂さんをみて、お母さんがこう言いました。「美穂、ダイエットもいいけどお肉やご飯も食べないと。体に栄養とらないと病気になるわよ」。美穂さんは「はーい、わかった。ご飯食べるから、少しだけよそっといて」と、素直にいいます。「お母さんに心配かけてはいけない。食べるふりをしてでも…」と、せいいっぱい気をつかっていました。

しかし美穂さんはだんだん食事が食べづらくなってきた自分に気がついていました。「食べたら太るのではないかしら。このやせる喜びは何にも代えがたい。誰が何と言ってもぜったいに手放してなるものか!」美穂さんの心のなかではこのような強い決心が次第に根付いてきていたのです。

一口のご飯がなかなか飲み込めず、吐き出してしまった

お茶碗をみるとたくさんごはんが入っています。「うわー、こんなにたくさん!でもがんばって食べないと。お母さんも見てるし、安心させてあげなくっちゃ」と思い一口ご飯をほりこみました。もぐもぐもぐもぐ…なんども噛み砕きはするのですが、飲み込めません。のどの奥がつまったように感じで、飲みこもうとすると戻してしまいそうです。「美穂ちゃん、どうしたのさっきから口のなかでかんでばかりいるじゃない。ごくんって飲み込んだらいいのよ、ほら」と、お母さんはせかします。

ご飯を飲み込むようせかされた美穂さんは、急いで飲みこもうとして思わず口の中にあったご飯を吐き出してしまいました。自分でもびっくりする行為でした。飲み込もうとしたのに、反対に吐き出すなんて。お母さんもびっくりして「まあ、美穂ちゃん、なんてことするの!」と、しかめっ面です。

美穂さんもここまできて「やせたい」と思って目分が始めたダイエットが、変な方向に行ってしまっていることに気がつきました。

やせる喜びが、いつしか「太る恐怖」になっていた

「食べて太ったって死ぬわけじゃないし。ぜんぜんかまわないのにな。それが恐くて食べられないのよ」と、美穂さんは心のなかでつぶやきました。ボーイフレンドも今では「美穂ちゃん、ダイエットやりすぎだよ。やせすぎてるよ」と、言います。しかしだからといって食べようとすると、太る恐怖がわいてきます。

お母さんの後押しに対して美穂さんは「体重が40kgになったらちゃんと食べるから。それまでそっとしといてほしい」と懇願しました。「40kgですって、美穂は身長160cmなのに、それじゃやせすぎじゃないかしら」と、お母さんは美穂さんの主張に「食べることの病気―拒食症」の心配がわいてきました。すぐにインターネットで専門家をさがしだし、当センターの摂食障害専門外来に来所しました。

「あれ、おかしいな」と思ったら、すぐ専門家に相談を

子どもの様子がおかしいと思ったら、美穂さんのお母さんのようにすぐに専門家に相談することをおすすめします。「今だけだろう。そのうち良くなるにちがいないわ」と、素人判断でもようながめしていると、拒食症の状態が進んでしまうおそれがあります。

美穂さんはお母さんの判断ですぐにカウンセリングを受けることができ、拒食症がこじれずにすみました。まだカウンセリングは続いていますが、とりあえず「太る恐怖」はしだいに落ち着いてきています。少しずつ食べられるようになり、「40kgが私の目標よ」という発言はしなくなりお母さんはホッとしています。

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