1.家の中でできる好きなこと、やれることで自信をつけよう

ひきこもり二年の美子が話し始めた

美子は高校時代から不登校ぎみで、卒業をまたずにひきこもってしまった。先生の配慮で「卒業証書」はもらえたが、卒業式には参加できなかった。あれからずーとひきこもりの生活が。今二十歳だからもう二年になる。

カウンセリングにやってきたのは、一年前。はじめは母親だけの参加。三ヶ月たったころ急に「私も行きたい」と言い出して、母親と二人で、時には父親と三人で面接に参加した。

「美子さんが好きな食べ物はなんですか?」「・・・・」

「毎日家で何をして過ごしていますか?」「・・テレビ見て」

「この絵のなかで一番好きな物を三つあげてみて」「えーっと、うーん、どれかなー」

こんな感じで面接はすすめられた。美子は語りかけてもだまってうつむくか、単語で答えるくらいだった。変わりだしたのは、半年ほどたったころから。家でやっているレース編みの材料をもってきて、カウンセラーに編み方を教えるという役割をとりだしたことがきっかけだった。母親の顔をなんども振り返りながらだったが、少しづつ自信をもって教えられるようになった。「中学生のときにね、お母さんに教えてもらったの。覚えてよかった」と、美子はつぶやいた。

これをヒントに「美子が母親から教わりたい物」探しがはじまった。まずはお料理。「大好きなオムレツが作れるようになりたい」と、美子の希望でさっそく家でにわか料理教室がスタートした。

ひきこもり二年の美子がオムレツをつくった

「きのうはね、お母さんとオムレツつくったの。私が玉子といて、お母さんはタマネギきざんで。楽しかった」と、美子は面接がはじまるとすぐに話し始めた。生き生きした表情で、声も大きい。横で聞いているお母さんもうなずきながら、うれしそうだった。「おいしかったよ。ね、おかあさん」と、笑顔で振り返る。

「そう、オムレツね。なにがおいしい秘訣ですか?」「玉子は何個使えばいいのかな」と、カウンセラーも話が展開するような質問を投げかけていく。美子は紙に絵を描きながら説明してくれる。「あのね、玉子はね、三個つかって。よくまぜるのがこつなんです。なめらかにって、お母さんいつも言ってます」「それとオムレツの具を細かくみじん切りにするんです。細かいほうが舌触りがいいから、おいしく感じられるんです」。

好きなこと、やれることから自信をつけて

好きなことならどんどん話せる。自分がやったことなら自信をもって教えられる。そしてしっかりと聞いてくれる人がいる。この三拍子そろった体験が、美子を少しづつ変えていった。

自室で過ごすことが多かった一日だが、いつのまにか食事は家族と食べだした。お風呂の掃除も進んでやりだしたし。そして長い間の懸案事項だった「歯医者」へ、自分で行くことができた。

大きなことは後回し。家の中の小さなすぐにでもできることからスタート。できれば母親や父親といっしょにできることがいいだろう。まずはやりたいこと、好きなことから始めていくのがいいだろう。「できた」という体験がつみかさなれば、それが自信につながっていく。

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