1.「過食症は治りたい…けど治った後が不安なので治りたくない」

「過食嘔吐がなくなると、いまの私じゃなくなる。そんな自分が不安でたまらないんです」と、長い年月過食症を患ってきた幸美さんは言う。

過食嘔吐がある自分に長い年月慣れ親しんできた。過食症だから与えられた恩恵―大切に扱われて、頑張らなくてよく、好きなことができて…これら全てを失ってしまうのではないだろうか。それが不安でたまらない。

過食症だからお母さんは私にやさしくしてくれる。なんでも弟を優先してたのに、過食症だとわかってから私を先にしてくれるようになった。昨日のデザートだって「お姉ちゃんが選んでからね」って言ってくれた。お父さんも私が「お父さん、家のことしないのはおかしい」って言ってから、ご飯の後かたづけもやっている。もちろん喜んでやってないのはわかってる。私が過食症だから、言うことは聞いてやらなければ、と思っているのだ。

自分が大切にされている状態が、過食症が治ったら元に戻ってしまうのかしら。

「過食は治りたいけど…治った後が不安なので治りたくない」。なんてわけのわからない心の動きだろう。でもこれは過食症が治る過程でよくあること。がんばってやってきて、後もう少しで過食から抜け出せるところ。暗いトンネルの向こうに明かりが見えだしたころによく起こる揺りもどしだ。「過食症があることでルーズな生活も認められてるし、部屋が汚くても文句言われない。自分のペースでゆうゆうと生活していられる。これがみんななくなってしまい、また気づかいいっぱいの良い子に戻らなくてはいけないのか。それに将来の生活も考えなければいけないし、また頑張らないといけないんだ」。

「過食症は治りたい、けど治った後が不安なので治りたくない」、長い年月過食症を患った人にありがちなこの気持ちを克服できるだろうか?これが過食症からの脱出のポイントの一つである。

症状が良くなってくると、この心の動きはよく起こってくる。しかしこれは過食症が良くなってきた上での不安だ。いままで頑張ってきた結果なんだということをしっかりと認識しよう。事態は良い方向へいっているのだ。この不安を一人で悩まずカウンセラーの助けを借りながら乗り越えていこう。過食症からの脱出は、もう一山のむこうに確実にあるのだから。

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