【質問4】拒食症の娘を「わがままや」と決めつける父親に困っている母親(D子20才 拒食症歴4年)

【質問の目次】

  1. 少し食べられるようになり、体重も安定してきた拒食症のD子さんだったのに
  2. 拒食症の娘を、「好きな物しか食べないのはわがままや」と父親は決めつけて

【答えの目次】

  1. 「また拒食に逆戻り」に母親は落胆、でも父親も心配から
  2. 「お父さん喜ばせたい」と「いじわるなお父さん」と、二つの気持ちが
  3. 「あきらめず、ゆっくりと食べられる物からはじめましょう」
  4. 身体の心配は、内科で診察をうけることで対策が明確に
  5. 拒食症の子は「体重が増える」ことに非常に敏感

【質問4】拒食症の娘を「わがままや」と決めつける父親に困っている母親(D子20才 拒食症歴4年)

●母親の訴えです。

父親は自分で決めた物しか食べない拒食症の娘のことを、「あいつはわがままや、好き勝手にやってるだけや」の一点張り。どんなに私が説明しても受けつけません。せっかくカロリーの低い物なら食べられるようになっていたのに、一つの出来事をきっかけにまた元の木阿弥で食べられなくなってしまいました。私はガックリ意気消沈し、また初めっからやり直しかと思うと気力がわいてきません。(D子20才 拒食症歴4年)の母親より

(1)少し食べられるようになり、体重も安定してきた拒食症のD子さんだったのに

D子さんは拒食症になって4年になります。以前なにも食べようとしなかった頃に比べたら、ワカメやおとふなどのカロリーの低いものは食べられるようになってきました。ごはんもお茶碗半分くらいなら食べています。体重もようやく安定してきて、母親はホッとしていた矢先のできごとでした。

夕食のとき父親がD子さんに「お肉半分でいいから食べてみ」といって、自分のお肉を切りわけて娘のお皿にのせました。「ムリだったら、食べなくていいのよ」とそばから母親が口添えをしたのですが、D子さんは「いいよ、お父さんが食べなさいって言ってるから、私がんばる」と言って必死で食べようとしました。しかし飲みこもうとすると「オエーッ」と吐き出してしまいます。「D子ちゃん、やっぱりムリよね。もういいでしょ、お父さん」と言うと、父親は黙ってうなずきました。

(2)拒食症の娘を、「好きな物しか食べないのはわがままや」と父親は決めつけて

肉を食べようとがんばったのがいけなかったのか、D子さんはそれから何も食べられなくなってしまいました。やっとゼリーを口にできただけでした。食べ物をみると「吐きそう、寒い」と言いながらフラフラになっているので大学の講義にも出席できませんでした。

そんなD子さんの様子をみて父親は怒っています。「あいつはわがままや。ほんとうは何でも食べられるはずや。好きなものしか食べない。そんな勝手なところが腹がたつんや」と決めつけています。「あなた、いまだにそんなこと言ってるの。カウンセリングに参加してくれて、少しはわかってくれてるのかと思ったのに。拒食症だから食べられないってカウンセリングの先生がおっしゃってたでしょ。お肉も必死で頑張って食べようとして。かわいそうやないの」と、こんどは父親と母親のけんかになりそうでした。母親はD子さんの味方をするのですが、正論で対抗して来る父親にはかないません。

父親とD子さんのあいだで板挟みになっている母親。しかしそれ以上にD子さんの身体が心配な母親からの相談です。

【答え4】

(1)「また拒食に逆戻り」に母親は落胆、でも父親も心配から

「拒食症の娘さんがせっかく自分で決めたカロリーの低いものなら食べられるようになり、体重が安定しつつあった時だけに残念ですね」とカウンセラーは母親をなぐさめるように言いました。「また元にもどってしまったのか」と、母親の落胆ぶりは目にも明らかでした。でも父親も悪気でお肉半分をD子さんのお皿にのせたのではないでしょう。「これくらいなら食べられるかな。少しは肉も食べないと栄養が取れないやろ」と、心配の気持ちもあったにちがいありません。

(2)「お父さん喜ばせたい」と「いじわるなお父さん」と、二つの気持ちが

D子さんの気持ちはどうだったでしょうか。あとで母親が聞いてみると,「お父さん、私が食べたら喜ぶだろうな。がんばって食べてみせよう」と思ったといいます。お父さんの期待にそってあげようと、頑張って食べようとしたD子さんの気持ちをしっかりとくんであげましょう。「食べないとお父さんが、がっかりすると思ったのね。D子ちゃんのやさしい心づかいだと思うよ」と、母親の気持ちもしっかりと伝えましょう。

D子さんの心には反面「肉なんてカロリーたかいよ。食べられないのわかってるじゃん。いじわるなお父さん」という腹立たしい気持ちもあったのです。相反する二つの気持ちが渦巻いて、なにがなんだかわからなかったとD子さんは話しました。「カロリーの低い食べ物なら食べられたよね。いきなりステーキ半分はきつくて、食べられなかったのも無理ないと母さんは思うよ」とフォローの言葉をかけてあげましょう。

(3)「あきらめず、ゆっくりと食べられる物からはじめましょう」

母親はまた振り出しにもどったような気がすると言いますが、カロリーの低い自分で決めた食物が食べられるようになっていたのは大きな進歩でした。いったん体重が安定レベルにまで達していたのですから、以前よりは早くその数値に戻るものと思われます。あきらめずに「食べられる物からゆっくり食べはじめようね」と、自分にも言い聞かせながらやりはじめてみてください。

(4)身体の心配は、内科で診察をうけることで対策が明確に

もう一つ大事なことがあります。大学へ通えない状態がつづくようなら、内科で一度診察をうけてみましょう。身体的に大丈夫か。身長と体重の関係は危険値にたっしていないか。ただちに入院しないと命の危険が、というレベルでないことを確認できたら、まずは落ち着いていいと思います。時間をかけてゆっくりと「以前のようにD子が決めた食べられるものを食べていきましょうね。あなたのペースでいいのよ」と、声かけをしながら元の食生活に戻るのを待ちましょう。

(5)拒食症の子は「体重が増える」ことに非常に敏感

拒食症の子は「体重が増える」ことに非常に敏感です。ちょっと増えても大騒ぎをして、動けなくなることがよくあります。あせらず子どものペースや気持ちを守りながらすすめていきましょう。またカロリーや体重などにとらわれている本人の気持ちを、何か好きな物や楽しめることを増やして、いっしょに楽しめるようにするのも良い対応です。

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