『過食症と拒食症』危機脱出の処方箋 第3話(母親との関係が・・・2)

『過食症と拒食症』 ― 危機脱出の処方箋 ―  福田俊一、増井昌美著 (星和書店、2001)より

本書は淀屋橋心理療法センターで治療したケースをもとに執筆、星和書店より出版したものです。本文のなかから症例や治療のポイントを抜粋しながら、要点やあらすじをシリーズでご紹介していきます。全文をお読みになりたい方は、本書をごらんください。なお本書は全国各地の主要書店にてお求めになれます。(¥1800)

『過食症と拒食症』 ― 危機脱出の処方箋 ―

第一章親子の葛藤をのりこえ、信頼関係を築く

三、母親との関係が過食・拒食症の多くの要因に

(2)子どもが厳しくなるとすぐメゲる母親の子も、過食は治りにくい

しっかり母さんの話をしたところで、その正反対のタイプについても問題があることを話しておこう。子どもが親に気を使っておとなしい良い子であれば、やさしい母親のままでいられるが、過食の治療がすすんでくると子どもも変わってくる。いままで見逃してくれていたことにもケチをつけるようになったり、母親のやり方を批判したり。この段階で母親の方が体調を崩すことがある。これがまた過食の治療に大きな座礁となる恐れにつながる。次にその事例を紹介しよう。

症例1:「そんなにきつく言わないで。ママお腹が痛くなってきた」由佳(本人、大学三年、21才、過食歴1年)

母親:由佳の好きなパンやさんでめずらしいパン買ってきたよ。お茶して食べようか。

由佳:ありがとう。このパンどれくらいに切ればいい?

母親:適当でいいよ。

由佳:適当ってどういうこと?そんな返事したら私が困るってことわからないの。

母親:あら、ごめん、ごめん。えーとね、三分の一づつくらいかな。

由佳:おいしいね、このパン。パンといえば思い出すわ。高校生の頃だったね。私が朝パン食にしてって言っても聞いてくれなかったよね。

母親:お父さんが朝はごはんでないとダメだったからね。

由佳:いつもそう。正君(弟)ならよくても私の言うことはいつもダメ。母親に無視される気もちかわかる?

母親:うん、悪いことしたよ。

由佳:ほんとうにそうよ。ガマンしてたのよ。だってまったくお父さんもお母さんも私に何も言わせてくれなかった。ぜんぜん聞く耳もたなかったもんね。

母親:由佳ちゃんはいい子すぎたからね。ママたちわからなかったの。もっとわめいてでも主張してくれたらよかったのに。

由佳:じゃママは由佳がいけなかったって言うの。ママからそんな言い方されるとすごーくストレス感じる。そんなこと言わないで。ほんとうにムカツク!

母親:ごめん、ごめん、そんなつもりじゃー。あいたたー、胃のあたりが痛くなってきた。もうそれくらいにしてよ。

由佳:またお腹が痛いで逃げるの。私がいままでどんなにガマンしてきたかわかるでしょ。過食にならなかったら、今でもママはきっと自分のやり方を押し通してたよね。

母親:もう遅いからママ寝るわ。胃薬どこだったかな。ああ、痛い。

本書では、以下に「Q&A」の形式で、いろんな質問に答えています。そのうちの一つをご参考になればと、抜粋しました。

(以下抜粋)

Q:母親が体調を崩したり、精神的に落ち込んだりすることでどんな支障がでてきますか?

セラピスト:過食の治療がまたもとに戻ってしまう恐れがあります。小さい頃から気を使って自分を出さなかった。親の器におさまるふりをしてきた良い子の自分から脱皮して、批判する自分、わがままを言う自分、本来の自分を出せるようになってきた。抑えてきたから腐って膿になって今噴き出しているんです。出し切れば本来の自然な自分が出てきて伸ばしていくことができるのですが、ここで母親がダウンするとまた元の殻をかぶった良い子に戻ってしまうおそれがあります。もともと親思い家族思いの子どもですので、ダウンが長引けば必ずといっていいほどそうなるでしょう。

Q&A

本書には、この質問(Q)のほかに、以下のふたつの質問について、セラピストからの説明(A)が書いてあります。本書にてご参考ください。

Q:かなり厳しく母親を攻めていますね。過食が治る道筋だとわかっていても、毎日こんな調子だと体調を崩すのもムリはないという気がしますが。

Q:こうしたときの切り抜け方はあるのでしょうか?押してもダメ、引いてもダメという状態のように見えますが?

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