「家族」をあつかう難しさ2

そのころ私は、いろんな人が勇気をもって語り合えば、ずいぶん人生が開けてくるという考えをもっておりましたので、お父さんがこられたとき次のように言いました。「よく来て下さいました。息子さんはお父さんに対して複雑な気持ちをもっておられるように思います。一方では非常に近づきたい気もちがあるのに、他方では非常にかたくなな気もちをもっておられます。カチンコチンに凍ってしまった氷のようです。この氷をとかすことができたら、きっと息子さんは変わりますよ。そしたらお父さんも後のことを気づかいすることなく安心していくことができますよ」という話をしたんです。こんな失礼な話でもご高齢の方ですから素直に受け取っていただけたようなわけです。それから今度は息子さんに入ってもらい、次のように話をしました。「お父さんが面会にこれるのは、これが最後になるかもしれない。ひとつ君の思っていることがあるなら思い切って言ってみてくれませんか」。すると、二人は1メートルぐらい離れて座り、「からだ、元気か」「うん」とか、「小遣いはどうや」「別に」・・こんな話ばっかりなんです。「これはいかん、ちょっとかたいなー、何か工夫しないと」、そこで思いついたことは、この場を劇的に盛り上げ、父と子の交流にドラマチックな変化を起こそうということでした。これが親子が対面できる最後のチャンスだということをさかんに強調しながら、「お父さん、ここでひとつ息子さんと一生懸命いろいろ話し合って、和解できるようにしませんか」と言って、お父さんの手と息子さんの手をとって重ねました。ところが、あまり反応がないんです。イヤイヤという感じでどうもいけない。もうちょっと何か劇的なことをしないとと思い、今度は二人を抱き合わせました。すると、抱き合った瞬間なんと40才をすぎた息子さんの顔ががらっと変わったんです。かたい表情だったのが、いまにも泣き崩れんばかりのやわらかい、ものすごくいい表情に変わったんです。「しめた!、やっぱりこれだ」と思いました。ところがお父さんの方はさっきと一緒。ぽかんとしてるんです。実にしらけましたね。子どもは敏感です。それをちゃんと見てるんです。父親の顔をみた瞬間、表情が元に戻りました。わずか0.5秒の間のできごとなんですが、「家族というものはなんと難しいものだろう」と、また同じことを体験いたしました。

それから別のケースですが、家庭内暴力を起こしている娘さんを抱えた家族の面接をしたんです。お父さんが参加しやすいということで、夜に家族五人あつまっていただきました。「お父さん大変でしたね、仕事の都合をつけていただいて。お母さんも、皆さんを引っ張ってくるの大変でしたでしょ。お姉ちゃんなんかスケジュールこんではるのに、本当によく来てくれました」と、家族一人一人に感謝し、それぞれのいいところを誉めて、「それじゃあ、ちょっと私、準備をしますのでここでお待ち下さい」と言って席を立ちました。ところが部屋をでてわずか5歩ぐらい歩いた時、ガターン、ドターン、「きゃー、何するのー」、「うわー」・・・と、えらい騒ぎが起こってしまったんです。それでその日の面接はつぶれてしまったんですが、またまた「家族というものは難しいなぁ」と痛感しました。

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