「家族」をあつかう難しさ1

他にもいろんな症例があります。たとえば42才の強迫神経症の男性ですが、これまで一度も職についたことがなく、自分の手がきれいか汚いか、ただそれだけを考えてきたような人です。20才過ぎから現在まで朝起きたときから顔を洗うまでのやり方が滞りなくできたかというようなことばかりを気にし、20年近くも外の社会と交流を持たず生活してきたということです。そういう人の場合は、心がかたく閉ざされておりなかなか開きません。自分の手がきれいか汚いかということにずっとこだわって、ただ手をじっと見て暮らしてきたわけです。こちらが何かいいかけても、弱々しい声で「ええ」と答えるだけで、逆に何かポンと問いかけると、顔を急に緊張させたまま一点をじっと見つめているだけでした。「ちょっと悪かったかなー、邪魔してしまったかなー」というような気もちにさせられることばしばしばありました。

病院でもあまり他の入院患者とのつき合いもなく、自分一人の世界に閉じこもっていました。もし心を開いていろんな人とつき合うようになったら、この人の人生はかなり変わるのではないかと思いました。

その頃ちょうどいい機会があったんです。その人にはかなり高齢のお父さんがおられたのですが、聞くところによると、お父さんと息子さんの間にはかなり深い溝があったようなんです。そのお父さんは病気でずいぶん体が弱っておられたのですが、遠方からはるばる面会にこられました。「私は長い間病気で、もう老い先も短いし、これが最後の面会になるんとちがいますやろか」と言われるのです。これは大きなチャンスだと思いました。同時に、この父と子は心の底ではお互いにものすごく気をつかい合っているということもわかってきました。「これは何かひとつ二人を結びつけるきっかけを作らねば」と思い、父と息子の対面のドラマを仕組みました。

シリーズ記事

1.家族ぐるみの治療をめざして1

淀屋橋心理療法センター所長の福田です。まずは、私がどうして「家族」ということに興味をもち始めたかというお話からさせていただきます。 今から18年ほど前、私は大阪のある総合病院の精神科に勤めておりました。そこには思春期の子 […]

2.家族ぐるみの治療をめざして2

まずは、子どもに向かって「君ね、このあいだ言ってたけど、あれはすごく大事なことのようやな。お父さんに言いたい気もちあったな。あれ、ここでちょっと話してみないか」と水を向けます。私の希望としては、ここで勇気をだして普段言え […]

3.家族システム論1

家族療法家は症状を背負った子どもをみる場合、家族が問題らしいということ、奇妙なこと、興味深いこと、その他非常に大事なこと等さまざま気がついていました。しかし、残念ながら家族療法家は長い間認められるということがなかったので […]

4.家族システム論2

これはどういうことでしょうか。技術はあるんです、見る目もあるんです。しかし、自分の息子に出会ったときにはまったく無力になるる恐ろしいことですね。これは、その人がその場に影響されていると言えます。どこの場にいるかということ […]

5.「家族」をあつかう難しさ1

他にもいろんな症例があります。たとえば42才の強迫神経症の男性ですが、これまで一度も職についたことがなく、自分の手がきれいか汚いか、ただそれだけを考えてきたような人です。20才過ぎから現在まで朝起きたときから顔を洗うまで […]

6.「家族」をあつかう難しさ2

そのころ私は、いろんな人が勇気をもって語り合えば、ずいぶん人生が開けてくるという考えをもっておりましたので、お父さんがこられたとき次のように言いました。「よく来て下さいました。息子さんはお父さんに対して複雑な気持ちをもっ […]

関連記事

淀屋橋心理療法センターの卒業生「治った本人やご家族から寄せられる声、声、声」

毎朝センターに出てくると、まずメイルボックスを確認する。いろいろな書類にまじっていつも心をなごませてくれるものがある。それはここで治療を受け、今は立ち直った人たちとあおの家族からのお便りである。 読みながら思うこと、それ […]

2014.12.24

子どものおねしょ

子どものおねしょは結構長引く場合もあり、解決に困っておられる親御さんも多いのですが、一工夫すると良くなる事があります。基本的には親子の間が温かくなるように工夫するのです。

2006.03.15

過食症 ひたむきな親の気持ちが子どもを治す

先日、過食症の息子さんの相談で(最近は男性の過食も多いのです)、中国地方から来所されているお母さんの面接をしていました。 治療は最初が一番大事な時期で、軌道に乗るのが先か、こじれるのが先か、時間との競争です。最初からしっ […]

コラム一覧へ