子どもにいやみばかり言ってませんか?

「なんでうちの子はこんなに反発ばかりするのかしら」と、お母さんからよく聞かれます。「反発するというのは反発できる元気がある証拠だからいいじゃないですか」と、お答えするのですが。これでは解答にならないといわれるお母さま方に、家での会話の記録をつけてきてもらいます。読んでいくうちに「やっぱり思った通りだ」という点がいくつか必ずと言っていいほどでてきます。それは子どもに知らず知らずのうちにい「いやみ」を言っているのです。いくつか例をあげてみましょう。

例1: テレビ・ゲームが大好きな男の子(小学5年)

孝夫:お母さん、ぼくね、もうちょっとでクリアーできるねんで。ほれみてみて。

母親:なーに。またゲームかいな。あんたはゲーム大学へはいるんやな。

孝夫:そんなんちがうやろ。ほれこここやんか。もうここまできたら上がりなんやで。クラスでぼくがいちばんやで、きっと。

母親:そんなんで一番とってくれるんやったら、つぎの試験もきっと一番やろな。楽しみにしてるで。

孝夫:もうええ、お母さんはわからんやつや。あっち行って。

きっと孝夫君はもうどんなに楽しいことがあっても、遊びのことではお母さん話さなくなるでしょう。自分の一番得意としている瞬間をだいなしにされてしまったのですから。「僕のゆうことわかってくれへんのに、なんでお母さんの言うこと聞かなあかんねん」という論理が育っていきはしないでしょうか。

例2: 不登校の女の子とお母さんの会話(高校一年生)

真美:お母さん、きょうなんのおかず?

母親:またかいな。毎日食べることばっかりやな。

真美:そんなゆうても食べることしか楽しみないもん。

母親:食べることばっかり考えてるから、そんなに太るんやないか。

真美:太ってへんよ。体重かわらへんで。

母親:あんた、ちょっと自分でつくり。学校にも行かんとじーとして。たまには自分のもんは自分でつくり。

真美:いやや、つくって。

母親:学校へ行くんやったら、大ごちそうつくったげるわ。

この会話もとうてい真美さんを学校へ行かせることはできない雰囲気がつたわってきます。真美さんはだんだんくさって何をするのもいやになってしまいそうな気がします。

お母さんの会話のどこをどうすればいいのでしょうか?真美さんは食べることに興味をもっているのなら、それを話題にして話しを盛り上げる工夫をすればいいのです。テレビのお料理場番組をいっしょにみて「あれつくってみよか」と言うのもいいでしょう。本を買ってきて「今晩はこれいっしょにつくってみーひん」とさそってみるのもいいでしょう。

本人が楽しめることで盛り上がる工夫をするのが、本人を他の分野(ここでは登校)で動かす力になるのですが。

2019.04.17  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》福田俊一

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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