家庭内暴力(子が親や兄弟姉妹へ暴力をふるう)の「五段階」

第一段階:自制心のある暴力

怒るキーワード(学校、勉強、夜遊びなど)を口にすると、顔がキッとひきつる。

「え、なに?」と聞き返すと、「俺の話聞いてないんか」と怒り出す。

わざとドンドン音をたて歩いたり、ドアを力まかせにバタンと閉めたりする。

「叩かれたいんか」「蹴りいれるぞ」といった脅迫的な言葉ですごむ。

突然大きな声をだして叫んだり怒鳴ったり、テーブルを叩いたり、椅子をけったり。

気に入らないと、そばにある物(壊れない、あたってもけがをしない物)を投げてくる。

あたるとけがをする恐れがある(はさみ、お皿など)が、当たらないよう壊れないところへ投げる。

一見パニックに陥ったかのように暴れるが、相手の反応をうかがって調整している。

「ジュースいれろ」「ごはんもってこい」「足をもめ」など、母親を召使いのように使う。

カッとして「出ていけ」と親を家から閉め出すが、一時間ほどしたら落ち着く。

親やきょうだいをこずきまわすが、殴るまでにはいたらない。

第二段階:いやがらせの暴力

母親や妹(弟)に対して「俺がテレビみるから、おまえらは二階へ行け」などと、命令口調で物を言う。

父親が帰宅する時間帯に、わざと大きな音でCDやラジオをならす。

父親の背広を庭や土間に投げ捨てたり、靴を捨てたりする。

母親の大事にしているアクセサリー類などを、どこかに捨ててしまう。

親の大切な外出用の衣類などにハサミをいれ、切り刻んでしまう。

母親がだいじに育てている観葉植物に、油を流し込む。

家族がかわいがっている犬や猫の毛を刈ってしまう。

第三段階:破壊的暴力

大声をあげながら、テーブルを蹴ったり、椅子をひっくり返したりする。

ドアや壁をけ破ったり、バットなどで壊したりする。

手当たり次第に、壊れる物(コップやお皿など)を、危険な物(テレビや窓など)に向かって投げる。

後始末がたいへんな物(牛乳、醤油、卵)を、わざと部屋中にまき散らす。

カーテンやじゅうたん、畳などを、刃物でずたずたに切り裂く。

本棚にならべてある大事な本やアルバムなどをびりびりに破いてしまう。

庭に咲いている草花をひっこぬいたり、木を切り倒したりする。

第四段階:対人的暴力

父親や母親にむかって、殴ったり蹴ったり暴力をふるう。

当たると危険な物(時計やポットなど)を、人にむかって投げてくる。

父親の帰宅時間をみはからって、包丁などを持ち出し暴れる。

落ち着かせようと声をかけると、よけい火に油を注いだように激高する(自制心がきかない)。

じっさいにナイフなどで、母親や妹弟など自分より弱い物に切りつけ怪我をおわせる。

飼っている犬や猫を蹴ったり叩いたり、窓から突き落としたりする。

第五段階:脅迫的暴力

一から四段階の暴力に加え、法外な要求を親につきつけたり、自傷(罰)的行為で脅す。

思い通りにならないと、外から脅迫的な内容の電話をしつこくかける。

「今すぐ五百万円用意しろ。言うこと聞かないと命はないと思え」とすごむ。

「俺が会社を興すから、お前らが出資しろ」と、親に大金を出させようとする。

「この家をすぐに売れ。マンションを買って、俺にすまわせろ」と、実現しにくいことを言い張る。

「親父をこの家にいれるな。入れると殺す」と脅す。

「親父の車を売り飛ばしてでも、俺専用にスポーツカーを買え」と、自己中心な要求を言い通す。

「マンションから飛び降りるぞ」とか「俺が首つって死んでもええんか」などと脅す。

ナイフや包丁を部屋のあちこちにおいて、思い通りにならないと持ち出して暴れる。

家庭内暴力の「五段階」

ここにあげた項目は、今まで当センターで治療したケースを元に作成したものです。家庭内暴力の治療は、二段階あります。まずは本人の来所よりも両親が来所し、対応のこつを学ぶことが大切です。次に本人の力(自己主張の仕方、説得力、交渉能力など)を伸ばすことが望まれます。

家庭内暴力の詳細はこちら

2019.04.17  著者:《大阪府豊中市 淀屋橋心理療法センター》福田俊一

               

記事内容の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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