4.「ガンコ者はきらわれるよ、なんど言っても変えようとしないガンコな子なんです。困ってしまいます」とお母さん|摂食障害 カウンセリング治療専門外来(過食症・拒食症)

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4.「ガンコ者はきらわれるよ、なんど言っても変えようとしないガンコな子なんです。困ってしまいます」とお母さん

■「ガンコ」は摂食障害にかかった人によくみられる性格の一つです。「うちの子はガンコで困ります」という親御さんの声はよく聞かれます。はたしてこの「ガンコ」は、ほんとうに困った性格なのでしょうか?決してそうではないという事実をたくさん見てきました。ガンコさのおかげで素晴らしい仕事をした人は多くいます。摂食障害にかかった人たち(子)をよく理解して、対応のこつがわかれば伸ばしていける持ち味になるでしょう。

過食症を発症したきっかけは「ダイエット」

美桜さんは高校一年生の秋に過食症を発症し、カウンセリングをスタートしたのはその一年後。きっかけは「ダイエット」でした。

ダイエットをやればやるほど自分が思ったように「体重が減る」という結果でてくるので、美桜さんはうれしくてたまりません。「私、やせてきたわ。きれいになれるんだわ」と、鏡のまえでくるりと一回り。それともう一つ、ダイエットは母親の心配に反発してでも自分の意思ををつらぬけることができます。減量がじかにかんじられる爽快感、自分の持ち味であるガンコをつらぬけること、この二つの理由で美桜さんは、だれになんと言われようとダイエットをやめようとしませんでした。

それから二~三ヶ月して美桜さんのダイエットは、今度は過食症へと移行していきました。

幼稚園のころのエピソードをお母さんが

カウンセリング室では美桜さんとお母さんが座っています。「この子は小さいころからガンコで、てこずらされました」というお母さんの話。カウンセラーは「ガンコさは過食症にかかる人の特性の一つなんですが、美桜さんのガンコさについて小さい頃のエピソードがあればお話しください」と、水をむけました。

「そうですね、幼稚園で工作時間のことですが、糊でくっつければなんでもないのに『やだー、ここは糊つかっちゃだめなんだ。切ってくみあわせるんだ」と言い張って。とうとう終わりの音楽がなってもやめられず、一人残ってやっていたということがありました」。

「家であったことですが『これはお姉ちゃんのクレヨンだから、あっちの美桜のをつかいましょうね』と言っても、「いや、美桜はこれがいい。このピンクの色がいいんだもん!」と言って、握ってはなさなかったということもありましたね」と、お母さんは苦笑しながら話してくれました。

話を聞いてカウンセラーは「美桜さんのガンコさには意思の強さが感じられるな。好みもはっきりしている。これは決して困った点ではないのだが、お母さんにはまだそれが理解できていないようだ」と、思いました。

「ガンコな子はだめ、きらわれるよ!変えなさい」

美桜さんの小さいときからお母さんは「この子はなんてガンコなんだろう。人の言うこときかないし、こんなだったらきらわれてしまう。時間ばっかりかかって、みんなの後をついていくばっかりの子になってしまうだろう」と、心配していました。美桜さんはお母さんから「ガンコな子はだめ!きらわれるよ。変えようね」と、こんな言葉を言われ続けてきたと言います。

高校進学を決めるときも自分の行きたい学校を主張して何度も親と対立。でも美桜さんは曲げませんでした。それでうまくいけばよかったのですが「私が思っていた学校と違っていた」と言って、一年生の秋には過食症を発症し、二年生から不登校に。「それごらんなさい、親の言うこときかないからこんなことになるのよ」とお母さんは、美桜さんのガンコさを責めました。

このときあたりから「ガンコな性格はだめ」という思いが、いつしか美桜さんにもこびりついてきたようです。

「吐いたあと体がだるくてしんどくて。うつみたいに気持ちも重いし。『もう過食嘔吐なんかやめたい』と何度も思いました。でもどうしても止めることができないんです」と、美桜さんは涙を浮かべて言いました。「私はダメ人間、過食嘔吐もやめられないなんて。お母さんの言う事きかないでガンコを通したから、こんなことになったんだ」と、いつの間にかこんなふうに自己嫌悪の気持ちにとらわれてしまうようなったそうです。

ガンコを活かす生き方を、まだ見つけられていない

カウンセラーはこのいきさつを聞いて「美桜さんの個性であるガンコをどう活かすか。これがまだみつかっていないな。それよりも「ガンコは悪い」と、決めつけてしまっている。生まれつきの個性を隠して生きようとしても、どだいムリな話だ」と思いました。(文中カウはカウンセラー)

母親:先生、ガンコは生まれつきの性格ですけど、そのままでは学校や社会で通用しないよってこの子に教えてやらないといけませんよね。

カウ:いやー。持って生まれた性格ですからねー、そう簡単に変えるのはつむかしいでしょう。むしろ「ガンコさを活かす生き方を見つけて、りっぱな人間になりなさいよ」って言ったほうが取り組みやすいと思いますよ。

美桜:ガンコでそんなりっぱな人っているかな?お母さんから「ガンコを変えないと、嫌われるよ。もっと素直になりなさい」っていつも言われてるんです。自分のガンコさはイヤだと思ってるんですけど変えられなくて。

自分の持ち味を肯定できることが元気がでる秘訣

美桜は自分をガンコだと思っていますが、そのガンコさをイヤだなと思っていることも明白です。自分の持ち味を良いと思えない状態では力は湧いてこないでしょう。カウンセラーは美桜と母親に次のように語りかけました。

「美桜さんが自分のガンコを受け入れられ、『私はこれでいいんやな』と思えたら、もっと元気がでてくるでしょう。さらに進んで「持ち味であるガンコ」を活かす生き方が見つかったら、人生もっと楽しくなるはずです。そうした毎日なら過食症も治る可能性が高くなりますよ」。

カウンセラーは美桜のための治療プログラムを、じっくりと練る必要を感じました。

「好き嫌いをはっきりさせることは自分を明確にすること」

次のカウンセリングは一週間後にもたれました。「美桜さんはまだ自分の持ち味がしっかりとつかめているとは言いがたいです。それでどんなところで自分を通したいのか、人の言いなりになりたくないのか。これをはっきりとさせていきましょう。美桜さん、生活のなかでそう感じたことを次回までに書きとめてきてください」と課題をだしました。

「次に美桜さんは、自分の『好きな物』を書きだしてみてください。食べ物、色、服、かばん、俳優、歌手、タレント、スポーツ、などなど。なんでもいいのです。100個たまったら見せてください」。その次はこれと同じように「嫌い」なものも書き出します。これは自分を明確にする上で、とても効果のある作業です」

「ガンコはすばらしい持ち味」という言葉が美桜を元気に

こいうした具体的な作業とも思える課題をこなしていいくうちに、だんだんと美桜さんの表情が変わってきました。美桜さんの口から「私はガンコはいやだと思うけど、心の中では変えたくないって叫んでるんです」と言った本音が出るようになってきました。

美桜さんが一番喜んで変わっていったのは、カウンセラーの次の言葉でした。「個性であるガンコを生かせる毎日を送りましょう。個性を変えようとか隠して生きようとしても、美桜さん自身は芯から生き生きと生きられないでしょう。持ち味を抑えた人生になっても、過食症は治りません。過食症が『私はここだけは絶対にゆずれない』と、ガンコに主張しているとも言えるのです。言い換えれば、過食症が美桜さんに「あなたはガンコです。そのガンコさを失わず、しっかりと主張して生きましょう」と教えてくれているともとれるのです。「ガンコは、美桜さんのすばらしい持ち味ですよ」。

美桜さんはこの日以来すこしずつ変わってきました。「変わり者、ガンコ者」と言われながらも、しっかりと自分を主張していく美桜さんに。そこには交渉力も説得力もそなわり、ねばり腰もありました。今までの美桜さんにはみられなかったものです。

やがて美桜の過食症も一歩一歩治る道筋をたどり始めました。

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淀屋橋心理療法センター
福田 俊一(所長、精神科医)
増井 昌美(過食症専門セラピスト)

2012年12月3日

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 息子にカウンセリングの話をしても行きたがらないと思うのですが、どうしたらよいでしょうか。

 カウンセリングは初めてで、どんな場所でどんな形でするのか不安です。


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