事例3:「入院して治療をしなくては命が危ない」と主治医は言われますが、「入院は絶対にいや」と子どもは主張しています。母親としてこんな時、どうすればいいでしょうか?|摂食障害 カウンセリング治療専門外来(過食症・拒食症)

摂食障害 カウンセリング治療専門外来(過食症・拒食症)
事例3:「入院して治療をしなくては命が危ない」と主治医は言われますが、「入院は絶対にいや」と子どもは主張しています。母親としてこんな時、どうすればいいでしょうか?

夏美は中学一年生、当センター来所時は、身長157cm 体重33kgでした。小学六年生のとき病院で拒食症と診断され入院したことがあります。その時入院時の体重は31kgでした。

今年医師から「命の危険がありますから入院です」と決められた体重は35kg。来月には病院での診察があり、あと2kg増やさないと夏美は入院しなくてはなりません。「入院するの、いやだ」とパニック状態の娘に、どうしていいかわからず母親は相談に来所しました。

拒食症のカウンセリングには、命の危険体重をはっきりと

拒食症の子どもは日毎にやせていくので、親は心配でたまりません。「食べなさい」と言っても子どもはなかなか食べようとしません。心配のあまりよけい親は強くせまり、むりやり食べさせようとしたりすることがあります。親子の信頼関係にヒビが入る恐れもありますので、むり強いは要注意です。一方子どもは食の話題になると黙り込んでしまい、ますます頑なになることもあります。やせ細っていく子どもの対応には、命の危険がともなうだけに非常に難しい面があります。

拒食症のカウンセリングでは「体重が命の危険ラインに達していないか」、この点をはっきりさせておく必要があります。内科医(小児科医)の診察をうけ「○kgが命の危険体重ですから入院ですよ」と、入院しなくてはならない体重を設定してもらいます。また体を維持していくために必要だと思われる検査をしてもらいます。多くのドクターは「血液検査、尿中ケトン体、心電図、血圧、脈拍」などを調べます。

拒食症のカウンセリングには内科医(小児科医)との連携は不可欠

カウンセラーは、夏美の状態についてくわしく聞いた後、通院していた病院の主治医の診断結果について確認をしました。

拒食症のカウンセリングでは、体の面は内科医(小児科医)にお願いし、心理面やその他のサポートはカウンセリングでという態勢を設定します。このように役割分担をして取り組むほうが、カウンセリングの効果があがりやすいからです。

親が心配な気持ちから「食べろ、食べろ」と強く言っても、子どもはよけい頑なになって口に食べ物を入れることを拒もうとします。それよりも医学的にきちんとした数値を示してもらい、医師から「○ちゃんは、体重△kgを切ると、命が危なくなりますよ。だから入院することになります」と言ってもらったほうが、まだ子どもは聞く耳をもつと思います。ただしこれは体重をどんどん増やせるという意味ではなくて、最低限の体重を維持できるくらいと思っておいたほうがいいでしょう。むしろ心の面での変化があってはじめて子どもは本格的に「体重が増えてもいい」と、思えるようになるのです。

このような態勢ができあがるとカウンセラーは、心理の面に集中して解決にあたりやすくなります。拒食症の子どもの場合「この体重では命が危ない」という状態に陥りやすいので、体の面を診る人と心理の面に集中する人を分けないとなかなかうまくいかないのです。それゆえ内科医(小児科医)との連携が不可欠なものとなります。

淀屋橋心理療法センターではこういうふうな治療のやり方で拒食症のカウンセリングに取り組み、かなりの成果をあげています。

医師が決めた体重と、子どもの入院をいやがる気持ちとの葛藤

体重が減り続ける夏美は主治医から次のように言われました。「夏美ちゃんの命を守る体重は35kgです。この数値を下回ると入院しなくてはなりませんよ」と。

夏美はそれを聞いて「入院は二度といやだ」と、泣き叫んで拒否しています。一年前小学6年生のときに一度入院したことがあり、鼻腔チューブで流動の栄養を送り込まれたことがありました。「むりやり太らされるのは絶対いやだ」という思いからしぶしぶ食べだして体重を増やし、退院にこぎつけたというつらい体験を夏美は決して忘れてはいませんでした。

意志に反してむりやりに鼻腔チューブで栄養剤を体に入れられて太らされるということに、夏美だけでなく拒食症の子どもは我慢ができません。じーっと辛抱して受けている子どももいますが、「太らされるのはいやだ!」と泣き叫び自分でチューブをはずしてしまう子もいます。

拒食症の子どもの心のなかは、こんな思いが渦巻いて…

「体だけ太らされるのが、くやしい!」という言葉を、拒食症の人はよく言います。

親や医療関係者の人たちが、子どもを救うためなのですが、鼻腔チューブや輸液で体重を増やせたとしても、それは一時的なものにすぎないでしょう。拒食症の子どもは気持ちの方から変えていかないと、本当に拒食症を脱することができたとは言い難いでしょう。

命を守るために決められた体重を下回らないよう入院しなくてもいいように、絶えず子どもは微妙に食べる量を調整して体重を増やそうとしています。病院での体重測定の日までに体重を増やせなかったりしたときは、要注意です。入院を避けるために知恵を働かせて、決められた体重より重くなる工夫をすることがあります。その日の朝から水を大量に飲んで体重を増やしたり、服のポケットに重い物をしのばせて測ったりすることもあります。

別の子の例ですが、26kgしかなくて水を1.5L飲んで27kg台に増やし、なんとか入院を免れたという報告もありました。

体重がどんどん減ってくるときはどうする?

体重がどんどん減ってくる場合には、子どもに「ドクターに決めてもらった体重、わかってるね。それより減ったら、入院よ。鼻腔栄養チューブもあるのよ」と、子どもにはっきりと話しておきましょう。そして決められた体重を下回らないよう、子どもが自らの意志で食べ出すのを待ちましょう。このように心の面を下支えしながら、低体重から浮上するのを待ちます。

入院させるために体重を決めるのでなく、「入院しなくていいために決める」という発想で取り組んでいくと、「入院したくないから、体重を増やそう」という本人の自発的な意志で、体重が増えてくるということがよくあります。この自発的な意志というのが大事なのです。

しかしこれは最低限の体重をを維持するということに役立であって、いくらこのやり方をしてもどんどん体重が増えるわけではありません。いのちを守る体重が守れたら、カウンセリングで自ら食べようという気持ちに変わっていき拒食症から脱するという解決を目指さないといけません。

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淀屋橋心理療法センター
福田俊一 精神科医 所長
増井昌美 摂食障害セラピスト

2010年7月26日

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 息子にカウンセリングの話をしても行きたがらないと思うのですが、どうしたらよいでしょうか。

 カウンセリングは初めてで、どんな場所でどんな形でするのか不安です。


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