3.いじめられても負けないわ。なにを言っても壊れない母親との関係が救いに(小夜子 26才 過食症歴8年)|摂食障害 カウンセリング治療専門外来(過食症・拒食症)

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3.いじめられても負けないわ。なにを言っても壊れない母親との関係が救いに(小夜子 26才 過食症歴8年)

長い年月過食嘔吐を患った人でも治って仕事ができるようになる人はたくさんいます。もちろん平坦な道ばかりではありません。が、一つ一つの困難を乗り越え、しだいにたくましく成長していくクライアントさんの姿には目を見はるものがあります。もちろん溜まりたまったストレスからまた過食症を再発する人もいます。一つ小夜子さんの事例を取り上げて、彼女のつまづきと立ち直りのプロセスをお話しましょう。

3年にわたる過食嘔吐の治療を経て小夜子さんは美容師の仕事が再びできるようになりました。ところが半年近くたったころから遅刻欠勤が増えてきました。心配したお母さんと一緒に小夜子さんは、カウンセリングを受けにやってきました。職場のいじめにめげずがんばって仕事に取り組んできたのですが、とうとう耐えきれず過食嘔吐が再びでてきてしまったようです。

過食症を経験した人はなにか都合の悪いことがあると事態を見極めず、とにかく自分を責める傾向があります。小夜子さんも「こんなことになるのは私が悪いからだ。働く資格なんかないんだ」と自分を責めていました。カウンセリングではそうした小夜子さんの気持ちをしっかりとくみ取りながら、現状を観察できいじめに負けない仕事術が身につくように導きます。

「いじめる人がいるけど、負けたくない」と小夜子さん

「小夜子さんが仕事をはじめてから半年たちましたね。よく半年も続けてこられました。素晴らしいことですよ」と、カウンセラーはまず小夜子さんの頑張りをほめました。「職場でなにか困ったことがおこりましたか?」と水をむけると、小夜子さんは堰をきったように話し始めました。(カウン=カウンセラー)

小夜子:自分では手もぬいていないし、そんな大きなミスもしてないと思うんですけど。なぜか私をいじめる人がいるんです。

カウン:いじめるねー、どんないじめをするんですか?

小夜子:はい。「この仕事でわからないことはYさんに聞いてね」とリーダーさんに言われてスタートしたんです。それで仕事の合間に聞いたらYさんはパッパッって言って、それで終わり。聞き返すと「なに聞いてるの、しっかりしてよ」ときつく言われて。もう一人の人に聞いたら「それはYさんの担当だからYさんに聞いて」と言うし。どうしていいかわからなくなってしまって。

カウン:なるほど、それで結局わからないままで困っているんですね。でもいじめられたときのこと、しっかり話せてますよ。あいまいにしないで、きちんと状態を話せるところがとてもいいです。

小夜子:はい、毎日つらいです。でも私、いじめられても負けないわ。

カウン:なるほど。小夜子さん、前よりかなりしっかりとつらい体験も受けとめられていますね。なにが一番つらいですか?いじめられたこと、それとも仕事がはかどらないことですか?

小夜子:うーん、やっぱり仕事がはかどらないことかしら。お客様をお待たせしたり、いやな思いをおさせしたりしたくないです。やっぱりいい仕事がしたいから。

カウン:その気持ちはとても大切ですね。だいぶ腹がすわってきたようにみえますが。これだけ話せるのなら、以前のように過食嘔吐にはまりこんでしまうってことは避けられるでしょう。

小夜子:でも今それで遅刻や欠勤が増えているんですけど。

カウン:そうですね。それをなんとかこの段階で防ぎ止めたいですね。一つガス抜きの場があればいいのに。ガス抜きの場とは思いっきり話して聞いてもらえる場のことなんですが。その仕組みをなんとか考えてみましょう。

母親の協力が急場を切り抜ける力になって

今また過食嘔吐再発の恐れから遅刻欠勤が増える傾向にあるので、母親が職場へ車で送り迎えをしています。その車中は小夜子が母親に話す貴重な時間帯になっているようです。カウンセラーはこの情報を得て、母親に次のようなアドバイスをだしました。

「お母さん、今小夜子さんは過食症の再発から仕事を続けられるかどうかという瀬戸際に立たされています。話によると、いじめをする人がいるとかで、小夜子さんは毎日いやな思いをしておられます。再就職したり復職したりすると、よくあることなんです。一度にのみこめず、手間取ったり何度も説明しなくてはいけなかったり。スタッフも忙しいとついイライラしてしまったりするんですね。小夜子さんは以前に比べると、ずいぶん冷静に状況を観察できるようになりました。今この瀬戸際を切り抜けるのに必要なのは『ガス抜きの場』です。グチや文句を思いっきり話せる相手と場が必要です。お母さんだったら安心して話せると思うのですが、どうでしょう?」

「ガス抜きの場ですか。なるほど、わかりました。それなら車で片道30分はありますので、できるだけ小夜子のぐちや文句を聞く時間にできます。職場であったいやなことが話しやすいように水をむけてみます」と、お母さんも協力することを約束しました。

何を言っても壊れない関係っていいですよね

それから二週間後のカウンセリングで次のような話が小夜子からだされました。「このごろ仕事行くのなんか楽になってきたなって感じます。お母さんには言いたいこと言うようにしてるし。腹たってきついことも言うけど、お母さんうんうんって聞いてくれてる。『言い方は気にせんといてね』ってあとで言ったりして母をフォローしときます。あんまりひどいこと言ったときは、『その言い方は母さんだってつらいわ』とかも言ってくれるから『ああ、ちょっと言いすぎたな』ってわかるし。何を言っても壊れない関係っていいですよね」。

小夜子さんはすごく嫌なことは誰にも聞かれたくないので、車で送ってもらう行き帰りに話すようにしているそうです。いろんな人の悪口を行き30分帰り30分のあいだにずっと話しています。

話すことでその日のストレスがリセットできる

それから一月たって小夜子の職場いじめについての話は減ってきました。遅刻欠勤もほとんどなくなって、お母さんもホッと一息です。「『お母さんみたいになんでも安心して言える人がそばにいてくれたら、職場で言いにくい人にもうまく言えるような気がするよ』と、小夜子が言ってくれました」とお母さんはうれしそうです。

「いじめを切り抜けるいい方法がみつかりましたか?」とカウンセラーが聞くと、小夜子さんから次のような話が返ってきました。「はい、わからないことはメモしてYさんの手がすいたなと思ったときに聞くようにしています。意外にすんなりと教えてくれるので、今は困らなくなりました。一方的にYさんが意地悪だったんじゃなくて、私も相手の状態をかまわず聞いたりしてたからかなと今なら思えます」と、小夜子さんは明るい表情で話してくれました。お母さんからも「話し方にだんだん勢いがついてきました。分析もしながら言ってるし、よくわかります」と報告がありました。

「なにを言っても壊れないお母さんとの関係が、私にとっては救いでした。安心してぶつけられるし。言ったあとでお母さんの顔色みて、『あ、傷ついてる。言い過ぎたかな、ごめんね』と後で言ってみたり。「お母さん、私のいやな話し聞いてくれてありがとう」という感謝の気持ちも示していたし。小夜子さんは言いたいことを思いっきり話すことで、その日のストレスがリセットできるようになり、いつのまにか職場のいじめを超えて仕事に取り組む姿にたくましい成長がみられるようになりました。

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淀屋橋心理療法センター
福田 俊一(所長、精神科医)
増井 昌美(過食症専門セラピスト)

2012年5月10日

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