5話:わかってもらえた―「やせることは命よりも大事」だと、わかってもらえてうれしい|摂食障害 カウンセリング治療専門外来(過食症・拒食症)

摂食障害 カウンセリング治療専門外来(過食症・拒食症)
5話:わかってもらえた―「やせることは命よりも大事」だと、わかってもらえてうれしい

「ここや、私の行きたかった所はここや!」

孝子(23才)は過食症になって5年。病院、診療内科、カウンセリングセンターなど、いろんなところに通いましたが治りませんでした。5年もたつと治らない自分の過食症に愛想がつき、多くの人は自暴自棄の心境になります。母親も「どこに行っても話は子どもにだけだし、親としてどうしてやったらいいかさっぱりわかりません」と、疲労感がにじみます。

そんなおり、母親がインターネットで「過食症 カウンセリング」で検索して、「淀屋橋心理療法センター 摂食障害専門外来」を見つけました。「本人を無理に連れてくる必要はありません。親御さんにアドバイスをさしあげます」という文字を見つけたときのうれしさ。「ここや、私の行きたかった所はここや!」と、母親は思わず声をあげたと話していました。

「いったい、いつになったら治るんよー!」

母親と孝子が当センターに通いだして一月がたちました。「小さな良い変化がみられるまで、3ヶ月は辛抱してくださいね」という過食症セラピストの言葉がはじめにありました。「え、3ヶ月も」と、あせりの気持ちがいっぱいの孝子は不安な気持ちでいっぱいです。「やっぱりあかん、ここへ通っても治らへん」と、ごてて母親を困らせ始めました。

「いったいいつになったら治るんよー。カウンセリングなんか行ったって、私の過食は治らへんのや。もう行くのやめてー!」と、とうとう孝子は一生懸命通っている母親を止めようとしだしました。「お母さんはね、自分のために行ってるんや。過食症のこともっと知りたいし、親としてなにができるかを学びに行ってるんや」と、頑張って言い返すお母さん。一時カウンセリングにこなくなっていた孝子でしたが、お母さんの熱心な姿をみてまた二人で通いだしました。せっかちな子どもとねばり腰のお母さんの組み合わせは、口げんかをさんざんしながらの通院でした。

5ヶ月後、あちこちに小さいけれど良い芽が

母親と孝子はバトルをくりかえしていましたが、5ヶ月たったころ小さいけれど良い芽があちこちに出てきました。

  • 「過食ね、午前中は私食べるのがまんするね。そしたら回数減らせるもん」と、工夫する意欲が
  • 「吐いたあと、自分できれいにするからほっといていいよ」と、過食症は最後まで自分の責任で
  • 「あした仕事に行くから、11時までには過食終わらせることにするわ」と、過食のコントロールが

来所当時は自暴自棄たっだ孝子さん、そしてカウンセリングを否定していた孝子さんが、いつのまにか過食症に対して前向きに取り組むようになってきました。5ヶ月たってこんなに良い芽がみられるようになるとは、セラピストはびっくりと同時にうれしさでいっぱいでした。

いったい何がこんなに孝子さんを変えたのでしょうか。カウンセリングのときにセラピストは聞いてみました。

「やせることは命よりも大事、見守ってあげてください」

セラ:すいぶん頑張っていますね。孝子さんがこんなに前向きに過食症と取り組むようになるなんて、思ってもみませんでした。なにかきっかけがあったの?

孝子:私が初めてここへ来たとき、先生が「3ヶ月しんぼうしてください」って言われて。覚えておられますか。私、あちこちへ引っ張り回されて、うんざりしてたんです。ほんとうは「もうこんなカウンセリングなんか、今日でおしまいや。3ヶ月もしんぼうできひん」って。お母さんにも嫌み言ったりして。でもここでカウンセリング受けているうちに、だんだん気持ちが変わってきたの。「先生が言われた言葉で、私のつらさをわかってくれてる」って思えたから。

セラ:そう、私の言った言葉で・・・どんな言葉だった?

孝子:「太ったから仕事行くのいや」とか言うと、お母さん怒るんだもん。「ほんとにそんなことばっかり言ってしょうがない子やね」って。先生は「太るのがいちばんいやなんよね」とか「体重測るのこわいよね。ほんとうは知りたいけど、増えてたらどうしようって不安で測れないよね」とか言ってくれて。お母さんにも「孝子さんにとって、今はやせることが命よりも大事なことなんです。だからここは否定せずに見守ってあげてください」って言ってくれたのが、すごいうれしくて涙がでそうだったんです。先生は、私のほんとうの気持ちやつらさをわかってくれてるんやなって。それでもう一度頑張ってみようという気になりました。

「やっぱりここへ来てよかった」と、お母さんも笑顔

それから孝子さんは過食症から目をそむけず、セラピストのアドバイスを基に治るための工夫を積み重ねるようになりました。

お母さんも「『食べたいんやけど、我慢せなあかん。止めたいやけど、止まらへん』ゆうて、孝子が泣き叫んでいるときに、いったい何ををゆうてやったらいいのかおろおろするだけでした。でもこちらへお世話になってからは、具体的できちんとしたアドバイスがもらえるようになって、どう言えばいいかがわかってきました。やっぱりここへ来てよかったですわ」と、笑顔がみられます。

「過食症には、特効薬はありません。生活のなかでできる小さな工夫と努力を積み重ねていくことが大切ですね。孝子さんはよく頑張っておられますよ。目には見えないけど、少しづつ少しづつ良くなっていくと思います。粘りづよく、こつこつとがんばりましょう。三人六脚の歩みですね」と、孝子のケースが治療の軌道にのったのを感じてセラピストも一安心しました。

(2008.01.30)

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淀屋橋心理療法センター
福田 俊一(所長、精神科医)
増井 昌美(過食症専門セラピスト)

2008年1月30日

4 摂食障害(過食症)―立ち直りのきっかけは身近にあります

カウンセリングでみえてきた小さな良い変化や、ほのぼのとしたエピソード、治療者の何気ない一言などが、過食症の立ち直りに良い影響をもたらすことがよくあります。それをきっかけにぐんぐん良くなっていかれる姿をみるのは、とてもうれしいものです。このシリーズは、治っていかれる途中の良い風景を取り出して紹介していきたいと思います。(M)

  1. 1話:うれし涙―「お母さん、私の話しよく聞いてくれるようになった」と、うれし涙を
  2. 2話:夢かなう―「こんなに元気になりました。やりたかった夢がかない、幸せです」
  3. 3話:柚子の香り―「しんどくて私、なにもできない。だって過食症やもん」が消えて
  4. 4話:えらいな―「どんなとき過食したくなるのかわかるって、えらいなー」
  5. 5話:わかってもらえた―「やせることは命よりも大事」だと、わかってもらえてうれしい
  6. 6話:少しずつ―うす皮をはぐように、少しづつ少しづつ良くなっていく過食症
  7. 7話:学んだこと―「過食症になって、人に合わせすぎてはいけないってことを学びました
  8. 8話:文句言い―しっかりとお母さんに文句が言えてますか?(千加 高三、過食歴一年)
  9. 9話:ほめてほめて―「じょうずやね」と母親がほめて、子が母を指導(瑛子23才、教師)
  10. 10話:コアラの人形―関心の対象が、安心できる方面にどんどんひろがってきた(美樹18才)

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 息子にカウンセリングの話をしても行きたがらないと思うのですが、どうしたらよいでしょうか。

 カウンセリングは初めてで、どんな場所でどんな形でするのか不安です。


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