発達障害

発達障害

わが子が「発達障害」と診断されても

淀屋橋心理療法センターの考え

「なぜうちの子は 友達とうまく遊べないのか」
「子どもが集団行動についていけなくて困っている。どうしてそうなんだろう」
「うちの子は注意散漫で、何度言ってもわからないようです。どうしたらよくなるでしょうか」
といった疑問を親御さんから投げかけられることがよくあります。

なぜそうなのか、「発達障害」という診断名を聞いて、理由や原因がわかりホッとされている親御さんもたくさんいることでしょう。

そういう概念ができたことで社会の理解が深まる事はとてもよいことです。しかし一方で私は「発達障害」という概念を子どもの状態にあてはめ、それ以上の解決をあきらめている傾向があるように思えます。これはややもすると「子どもの能力の成長はあきらめなさい」ということに使われたり、「子どもの成長の芽を必死でさがすことをあきらめる口実に使ったりする」ことになってはいないかと危惧しています。

当センターでは「発達障害かもしれない」と思われるお子さんに対しても、決して「この子はこれ以上伸びません」と決めつけません。そのお子さんの発達障害はどんなタイプか、それをまずしっかりと見極めます。そしてそのお子さんのタイプにあったカウンセリングを行っていきます。

発達障害と診断されても、お子さんの言語能力を伸ばすことによって、見違えるように精神的に成長するお子さんもたくさんいらっしゃるのです。言語能力から思考能力、能動性、広い視野等、どんどん変わっていくお子さんを見るのはうれしいことです。当センターは言語能力を伸ばすためのノウハウをたくさん持っています。

子どもさんの状態をそのまま受け入れてあげることも必要な場合があるでしょう。またその子の伸びしろをみつけ、最大限伸ばせるようカウンセリングで導くことも大切です。当センターでは、親御さんに接し方のアドバイスを出しながら、カウンセラーと手を携えて、子どもの小さな成長の芽を大きく伸ばすカウンセリングをおこなっています。発達障害と診断されたことで救われないお気持ちでおられる親御さん、ぜひ淀屋橋心理療法センターにご相談ください。

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発達障害とは

発達障害とは生まれつき脳機能の発達に偏りがあることで、社会生活に困難がみられる障害のことを指します。アメリカ精神医学会が作成しているDSM-5では、発達障害ではなく「神経発達症群/神経発達障害」という新しいカテゴリーで表記されており、以下の7つに分類しています。

※DSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)は、精神障害に関する国際的な診断基準のひとつです。今までに何度か改訂され、2013年に公表されたDSM-5が最新のものとなっています。

  • 知的能力障害群
  • コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群
  • 自閉スペクトラム症/自閉スペクトラム障害(ASD)
  • 注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)
  • 限局性学習症/限局性学習障害(SLD)
  • 運動症群/運動障害群
  • 他の神経発達症群/他の神経発達障害群

(参考:髙橋三郎・大野裕監訳「DSM-5「精神疾患の診断・統計マニュアル」)

このうち代表的な疾患の診断基準をみていきましょう。

自閉スペクトラム症/自閉スペクトラム障害(ASD)

  1. 複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥がある
  2. 行動、興味、または活動の限定された反復的な様式が2つ以上ある(常同的または反復的な身体の運動や会話。同一性へのこだわり。きわめて限定され執着する興味。感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さなど)
  3. ①と②の症状が発達早期から存在している
  4. 症状によって社会的、職業的、他の重要な領域における機能が障害されている
  5. これらの障害が知的能力障害や全般的発達遅延ではうまく説明されない

これらの条件を満たしていると、自閉スペクトラム症(ASD)と診断されます。

また自閉スペクトラム症の場合、他の疾患を併存していることが少なくありません。

知的能力障害(知的障害)を併存する方が最も多いですが、注意欠如・多動性障害(ADHD)、限局性学習症(SLD)などもしばしば併存します。

他には、てんかんや睡眠障害なども合併しやすいことが知られています。

てんかんについては、知的能力障害が重い方ほど多く認められています。

睡眠障害については、睡眠リズムの崩れやすさから、入眠困難や中途覚醒などの症状が現れることがあると言われています。

注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)

  1. 「不注意(活動に集中できない、気が散りやすい、指示に従えず仕事を最後までやり遂げることが難しい、物事を順序立てて取り組むことが難しい、忘れ物をしやすいなど)」と、「多動-衝動性(手足をそわそわ動かす、じっとしていられない、不適切な状況で走り回る、喋りすぎる、自分の順番を待てないなど)」が少なくとも6ヶ月以上持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応である
  2. 症状のうち、いくつかが12歳以前から存在していた
  3. 不注意または多動-衝動性の症状が、2つ以上の状況(家庭、学校、職場、その他の活動中など)において存在する
  4. これらの症状が社会的、学業的、職業的機能を損なわせている、またはその質を低下させている
  5. その症状が統合失調症、または他の精神病性障害の経過途中にのみ起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されない

なお、注意欠如・多動性障害(ADHD)単独で診断できるような医学的検査はまだありません。

そのため、医師が問診で、これまでの生育歴や現在困っていることを聞き取って、行動観察、質問用紙法の評価スケール(ADHD-RSなど)、心理検査などの結果を踏まえて診断します。

また診断基準にあるように、症状は小児期から現れていますが、青年期や成人期になるまで気づかれない場合もあります。

症状のうち、年齢を重ねるにつれて、多動-衝動性は成長とともに落ち着く傾向がありますが、不注意は大人になっても現れやすいと言われています。

例えば、仕事でミスが続くなど社会生活に支障があり、「自分はADHDではないだろうか」と気づくこともあります。

限局性学習症/限局性学習障害(SLD)

「限局性」という言葉で示されているように、全般的な知的発達に遅れはないが、「読み」「書き」「計算」など特定の学習行為に困難が生じている状態のことを指しています。

  1. 以下の症状のうち、少なくともひとつが6ヶ月以上持続している
    1. 読むことが不的確または遅い
    2. 読んでいるものの意味を理解することが困難
    3. 字を綴ることが困難
    4. 文法や句読点の間違い、段落をうまくまとめられない
    5. 数値や計算を習得することが困難
    6. 数学的推論が困難
  2. 学業的技能が年齢相応ではなく、学業や職業遂行または日常生活に障害を引き起こしている
  3. 学習困難は学齢期に始まるが、欠陥はその人の限られた能力を超えるまで明らかにならないかもしれない
  4. 学習困難は知的能力障害や視力・聴力、他の精神疾患、環境の不適切さなどではうまく説明されない

なお、限局性学習症/限局性学習障害(SLD)は、学習障害(LD)と呼ばれることもあり、文部科学省の定義では、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった能力が習得できなかったり、うまく発揮することができなかったりすることによって、学習上、様々な困難に直面している状態のことを指しています。(参考:文部科学省ホームページ)

チック症群/チック障害群

チックとは、突発的、急速、反復性、非律動性の運動または発声です。

トゥレット症/トゥレット障害

多種類の運動チックとひとつ以上の音声チックが1年以上持続している、重症なチック障害のこと。

発症は18歳以前であり、多くの方は成人するまでに軽快する方向に向かうと言われていますが、なかには成人期になっても強い症状が持続する方もいます。

発達障害者支援法について

発達障害者支援法について

上記は、DSM-5における発達障害(神経発達症)の定義ですが、2005年に日本で施行された発達障害者支援法における発達障害の定義は異なります。

第二条 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。(出典:発達障害者支援法 2016年改正)

発達障害者支援法が施行された背景

発達障害者支援法が施行されるまでは、発達障害者のある人への支援や発達障害の定義を定めた法律がありませんでした。

知的能力障害(知的障害)に該当する方は、知的障害者支援法など、他の法律で対応がなされたのですが、知的能力障害(知的障害)を伴わない発達障害のある方が、支援を必要としても、既存の障害者福祉制度のはざまで取り残され、十分な対応がなされないという課題がありました。

そのような状況を鑑みて、発達障害を早期に発見すること、発達支援を行うことに関する国及び地方公共団体の責務を明らかにすること、そして発達障害者に対し学校教育等における支援を図ることを目的に、発達障害者支援法は施行されました。

2005年にこの法律が施行されたことで、発達障害の社会認知度が飛躍的に向上したことは間違いありません。

しかし、社会の発達障害に対する正しい理解や適切な支援にはまだまだ課題があると言えるでしょう。

切れ目のない支援

2016年の法改正では、早期の発達支援に加えて「切れ目のない支援」が法律上明記されました。

医療・福祉・教育、就労等の各分野の関係機関が相互に連携し、乳幼児期から高齢期まで切れ目のない支援をすすめることが求められています。

切れ目のない支援

発達障害の二次障害

発達障害の支援を考える上で、二次障害について理解しておく必要があるでしょう。

生まれつきの発達障害を起因とし、周囲の環境との不適応によって、身体面・精神面・行動上の問題が起こることを二次障害と呼びます。

身体面の問題

→ 頭痛、腹痛、食欲不振、不眠などの心身症等

精神面の問題

→ 不安障害、うつ状態、パニック、不登校、引きこもり等

行動上の問題

→ 暴言、暴力、非行、問題行動、自傷等

二次障害への対応は、まずできるだけ早期に二次障害の存在に気づき、適切な支援をすることが重要です。

しかしその際、目につきやすい症状や行動を改善しようとするだけでは、うまくいかないでしょう。

二次障害が生じる背景には何があるのか、ご本人の発達特性や対人要因、環境要因を踏まえて考えることが必要です。

また、二次障害は周囲が発達障害に対して正しい理解をして、適切な関わりをすることで、「予防できる」ということを強調しておきたいと思います。

二次障害は周囲が発達障害に対して正しい理解をして、適切な関わりをすることで、「予防できる」ということを強調しておきたい

他機関で診断を受けられた親御さんへ

淀屋橋心理療法センターは、親御さんへ家族療法カウンセリングを実施し、お子さんに合った接し方の具体的なアドバイスを差し上げることで、効果をあげています。

よく親御さんから「他機関で子どもが発達障害の診断を受けた。子どもを診てほしい」というお問い合わせをいただきますが、まずは親御さんだけでカウンセリングに来ていただくことをお願いしております。

その方がうまくいくのです。

ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

発達障害の詳しい解説は当センターのこちらのページをご覧ください。→ 発達障害(ASD ADHD LD)とは?

最終更新日:2024.1.31

こちらの記事の監修医師

淀屋橋心理療法センターの所長 福田 俊一

淀屋橋心理療法センター所長 福田 俊一

  • 医師。精神科医。淀屋橋心理療法センターの所長であり創業者。
  • 日本の実践的家族療法の草分け的存在。
  • 初めて家族療法専門機関を日本で設立し、実践、技法の開発、家族療法家の育成に貢献した。
  • その後は、摂食障害、不登校、ひきこもり、うつ、家庭内暴力(子から親へ)、リストカット等の家族療法の開発に尽力している。
  • 著書多数。

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