対人恐怖症の事例:敏夫(高二)
「人の視線が気になり、外へでるのもしんどい」と不登校ぎみに
敏夫君は初診のカウンセリングを受けにくるのもしんどかったようです。面接室でじーとうつむいて、出されたお茶に手をだそうともせず座っていました。「さあ、どうですか。どんなところがつらかったか、話してくれませんか」とカウンセラーは、静かに語りかけました。敏夫君は話そうとするのですが、なかなかうまく言葉が出てこないようです。待ちかねたようにそばにいる母親が話しはじめました。カウンセラーは「お母さん、ちょっとお待ちください。ゆっくりでいいですから敏夫君のお話を聞かせてもらいましょうか」と、やんわりと母親を止めました。以下は敏夫君とカウンセラーのやりとりの抜粋です。
***内容は特定できないよう多少変えてあります。カウ=カウンセラー)***
電車の切符を買うとき、人に見られているような気がして手がふるえる
カウ:よくここまで来れましたね。なにが一番しんどかったですか?
敏夫:電車の切符買うときとか、自分が見られてる気がしてなかなかうまく買えなくて困りました。
カウ:そうですか。切符を買おうとするとどうなりますか?
敏夫:100玉一個入れようとしたら、手が震えてうまく入らないんです。カチカチ音がするので、横にいる人が僕の手元を見てるような気がして。次は50円玉一個、10円玉3個。一個入れるたびにキョロキョロして、見られてないかなって。もう肩に力がはいってきて、しんどいのなんのって。
母親:そやからお母さんが買ったげるってゆうてんのに。
敏夫:いやや、自分のことはしんどうてもやっていかんと。
カウ:敏夫君、なかなかその心がけはいいですね。時間はかかっても切符はうまく買えたんですね。
敏夫:はい、なんとか買えました。
カウ:その他にしんどかったことはありませんか?
人の視線が気になってしんどい
敏夫:電車の中とかで、向かいに座っている人の目が気になります。どこを見ていいか目のやり場に困ります。それと道を歩いていて、すれちがうだけなのに体に力が入ってしまって、足がもつれそうになったりします。
カウ:対人恐怖症のなかで一番よくある相談ですね。人と視線が気になるとか対面すると体が固くなるというのは。誰に対してもそうなりますか?
敏夫:誰にたいしてもです。知らない人なのに向いから来る人が気になって。あ、近づいてきた。どうしようってあせります。すれちがうとき足がもつれそうになったり。避けようとするとよけいその人の肩がふれる方へ傾いていったりします。
カウ:かなりしんどそうですね。そんなときどうしていますか?
敏夫:できるだけ目が合わないように下むいて早く通り過ぎようとします。自分の目を見られるのがいやなんです。心をみすかされてるみたいで。でもだんだん顔がこわばってくるのがわかります。しんどいです。
カウ:そうですか。典型的な対人恐怖症ですね。いくつかのポイントがありますので、順を追ってお話しましょう。しかし「こうしたら楽になる」という方法は、いきなり言えません。対人恐怖症はカウンセリングで確実に良くなります。が、じっくりと治さないとね・・。
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対人恐怖症(対人緊張)
敏夫君のしんどさ
- 電車の切符を買うのも手がふるえて
- 人の視線が気になってしんどい
- 人とすれちがうとき、足がもつれる
- 自分の目をみられるのがいやで、顔がこわばってくる
次回は、対人恐怖症(対人緊張)の子どもをもつ親は、どんな不安や心配をいだいているのでしょうか。親の視点からみた対人恐怖症と注意すべき点などをお話ししましょう。
淀屋橋心理療法センター
福田 俊一(所長、精神科医)
増井 昌美(家族問題研究室長)
2010年2月8日




