やせへのあこがれから強烈な「やせ願望」に
思春期のころ「ほっそりとした体つき」にあこがれ、ダイエットを始める女性が多くいます。「やせへのあこがれ」はきわめて正常なものですが、それがだんだんこうじてこだわりが強くなり「強烈なやせ願望」に変わっていくと拒食症への入口をくぐることになります。「スマートなかっこいい体になりたい」というあこがれとは違う強烈なものです。ただし小学生のころに発症した拒食症の場合は、自分の「やせ願望」に気づいていない子もいます。
拒食症の人はやせた時に感じた「スッキリ感」が忘れられず「やせることに生きがい」を感じたり、「これ以外に私の生きる道はない」という思いを信じ込んでしまったりします。その姿はまるで「やせ教の信者」であるかのような印象を与えます。
しかし最近は、あきらかに拒食症であってもやせ願望は認めず、「太りたくない」とだけ言う人もいます。
拒食症の発症年令は?
発症年令は近年下がりつつあります。「小学6年生の拒食症」ということで、我々も驚いていた時もありますが、昨年あたりから「小学4年生の拒食症」という事例もまれではなくなりました。
発症のきっかけはいろいろ
拒食症になるきっかけはその子(人)によっていろいろです。体育の時間跳び箱が飛べなかったから「もっと軽くならないと」と思ったりした子もいます。バレエの先生に一言「もっとやせないと、美しいシルエットにならないよ」と言われた一言が心にひっかかたり。「K子、このごろまーるくなってきたな。あんぱんマンや」とクラスの男の子にからかわれたとかで、甘い物をいっさい口にしなくなったという小学5年生の女の子がいました。その状態が続き、6年生のときに拒食症になり来所したケースもありました。
こんなちょっとした一言が子ども心にもひびいて、「やせなくては」という気持ちから食事の量をコントロールしたりとか、カロリーの少ない物を選んで食べたりするようになるようです。
やせたい気持ちはあるけれど、素直に認めない子どももいます。「食べなさい」と親に言われても「あしたになったら食べる」とか、「今はお腹いっぱいだから、後で食べる」と言ったりしてごまかしたりもします。拒食症の子どもは「お母さんに心配かけたくない」とか「食べたくないって言ったら怒られる」と、ケンカを避けたいという気持ちが強い場合もあります。
どんな子ども(人)がかかりやすいの?
拒食症の人の根っこには、強烈なやせ願望があるのですが、その頑固さには驚かされます。小さい頃から空気のよめる子、よく気がつく子、まわりの要望に的確に動ける子といった「良い子」に多くみられます。学校の先生に評価され、クラスのみんなから慕われて人気者だったりします。家では母親の手伝いもよくしてくれるし、弟や妹の面倒もみてくれる良きお姉ちゃんだったりもします。成績もよかったりしますが、とにかく「やりやすい子でした」と親御さんはよく言われます。
頼まれたらなんでも引き受けてくれるやさしい子。それだけに親御さんは「あの良い子が、なんでこんな食べない病気になってしまったのか、信じられません」という驚きの気持ちでいっぱいのことでしょう。
ただしこのような典型的な「良い子」像でないケースも最近は混じりはじめていますが。
わが子が拒食症であるか、見分けるのは難しいことも
拒食症は食を拒否する病気と言いましたが、子どもの場合は見分けることが難しいこともあります。拒食症になりはじめたころ、子どもは必ずしも食を拒否する気持ちを正直に出さないこともあるからです。家族には「食べたいと思っているの。少しでもいいから太りたい」と、心で思っていることと違うことを言ったりします。これは「お父さんお母さんに、これ以上心配をかけたくない」という気持ちが強くあるからです。このように拒食症の子どもには、親思いのやさしい子が多くみられます。
しかし心のなかでは絶えず「食べたら太るから食べたくない」という強い気持ちが渦巻いています。食べるふりをして後で吐き出したり、残したご飯をこっそり犬にやったりすることもあります。親の前では食べたふりをしているので、なかなか気づかないということもよくあります。
神経性食欲不振症(拒食症)の診断基準
【厚生省特定疾患・神経性食欲不振症調査研究班】
- 標準体重の-20%以上のやせ
- 食行動の異常(不食、大食、隠れ食い、など)
- 体重や体型について歪んだ認識(体重増加に対する極端な恐怖など)
- 発症年令:30歳以下
- (女性ならば)無月経
- やせの原因と考えられる器質性疾患がない
(「チーム医療としての摂食障害診療」診断と治療社(2009)より)
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DSM-Ⅳ-TRの神経性無食欲症の診断基準では、次のようなことが明記してあります。
以前は摂食障害は、食べないでどんどんやせていく拒食症と、どんどん食べる過食症に区別されていました。しかし今では大量に食べても吐いてしまいかなりやせている人もいるため、区別が難しくなっています。それで「制限型、排出型というふうに分けるやり方も出てきています。(DSM-Ⅳとは、アメリカ精神医学会が作成した「精神疾患の診断・統計マニュアル」というもので、現在世界中で使われています)
標準体重の出し方(平田法)
- 身長160cm以上 (身長−100)×0.9 = 標準体重kg
- 身長150cm〜160cm (身長−150)×0.4+50 = 標準体重kg
- 身長150cm以下 (身長−100) = 標準体重kg
淀屋橋心理療法センター
福田俊一 所長 精神科医
増井昌美 摂食障害専門セラピスト
2010年8月3日





